春・夏・秋・冬

 阪神大震災から6年が経った。地震から2ヵ月ほどして当地を訪れたが、そこで見たものは、倒壊した家屋と粉じん、ポツンと建っている焼けただれたコンクリートの塊、めくれあがったアスファルト。少年時代を過ごした町並みが、こうも見事に破壊されるものかと、自然の力を改めて思い知らされた

▼が、それ以上に感動したのは、同胞の姿だった。総聯西神戸支部に設けられた避難所では、災害から時間が経っていたせいか、笑いと涙があふれていた。笑いは希望を、涙は感謝を表す。他の避難所では見られなかった光景だ

▼支部には毎日のように各地からの支援物資が届けられていた。食糧や衣類はもちろんだが、茶わんや鍋といった生活用品、なかにはタンポポの葉もあった。わざわざ被災同胞に食べてもらおうと女性同盟北播支部のメンバーが山に入り、1つひとつ根を切り落として箱詰めしたものだ。だから避難所の人々は「タンポポのセンチェ」に歓声を上げ、その気配りに泣いたのだ

▼あれから6年が過ぎた。神戸は、いまなお大震災の後遺症にあえいでいる。不景気の日本で、さらに輪をかけた不景気が、同胞たちの生活を圧迫している。年が明けて、神戸朝高時代の同級生から電話があったが、景気が悪くなる一方だとのことだった

▼で、唯一明るい話題が、震災で店を失った同級生が、やっと店をオープンしたこと。当然、話題が震災のことにさかのぼった。「そやな、あの時はほんまにありがたかった。それを忘れたらアカン。頑張るわ」――。そう言って彼は電話を切った。(元)

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