女のCINEMA

「郡上一揆」

時空をこえ漲る農民パワー


 江戸中期、美濃国(現在の岐阜県)郡上で起こった、足かけ5年に及ぶ農民一揆のてん末を描いた骨太の時代劇。

 宝暦四年(1754年)、郡上金森藩は、藩の放漫財政によるツケを農民への重税であがなおうと、年貢米の取り立てを、従来の一定額の徴収から変え、その年の出来高による徴収(検見取り)で実施しようとする。

 この過酷な搾取に抗議して、郡上120余の村々から3000人以上の農民が八幡城に集結。

 その激しい強訴に、国家老はいったん「検見取りおことわり」の願いを聞き入れるが、この約束はすぐに反古にされ、より厳しい圧力を伴った強硬策に出る。

 ついに意を決した農民たちは、江戸藩邸直訴に及ぶ。しかし、生命をかけて老中の駕籠を止め、訴えにでたものの、巧妙にはぐらかされ続けて欺かれる。そして村ではまさに検見取りが強行されようとしていた。繰り返される藩との激突で傷つき倒れてゆく農民たちには、もはや幕府への直訴しか残されていなかった。それは即「死」を意味する。

 1000人ものエキストラを動員しての強訴シーンはど迫力。農民の怒とうのうねりが轟音とともに、足元から鳥肌立つような感動を呼ぶ。この強訴から始まって、幕府直訴へと段階的・組織的に進む闘争過程はテンポのよい運び。強いリーダーシップのもと、土に生き、生命と暮らしを守る農民の共同体の有様が印象的だ。そして、父が子に諭し続け、若い夫婦が同じくする志の何と誇り高いこと。

 この一揆の結果は、14人の農民の処刑という犠牲を出したものの、領主の更迭という江戸時代を通じて例をみない農民側の勝利となった。250年の時空を越えて、郡上の農民パワーが漲ってくるようだ。神山征二郎。112分。日本映画。(鈴)

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