ざいにち発コリアン社会
「民族のバトン」3,4世がきっちり受けとめたい
金剛山歌劇団3世メンバーによる座談会
李基成(23、トロンボーン奏者)
趙美鶴(22、踊り手)
全明華(22、歌手)
民族性を守ることについて語り合う座談会参加者
公演活動
民族の魂触れる場に/李 ―金剛山歌劇団に入団した動機は。 趙美鶴 初級部生徒の時、歌劇団の公演を見て自分もああなりたいと。 全明華 日本で民族性を守るのに最も貢献できるのが、歌劇団で歌を歌うことだと思った。 李基成 在日朝鮮人運動の担い手として、とくに芸術分野で力を発揮したいと考えたから。 ―歌劇団の活動は日本で民族性を守るのに大きな貢献をしていると思うが。 李 芸術というのは、何万回の演説より説得力があると思う。民族性の希薄化など、在日同胞社会も様々な問題を抱えているが、私たちの公演を見て一人でも多くの人が民族について何かを感じてくれたら。日本に住む同胞たちが、私たちの歌や踊りを通じて、祖国にいなくても祖国を肌で感じ、民族の魂に触れる、そんな場になればとつねに考えている。 趙 同感だ。人間は五感を働かせて何かを感じる。踊りは目で、歌や演奏は耳で感じとる。それ以外の第六感があるとすれば、その部分に訴えられる演技ができればと思っている。例えば、朝鮮人であることを恥ずかしく思っている若者が、私たちの公演を見ることで民族の血が騒いだりするという具合にだ。 全 自分たちが民族の文化を伝える伝達者であることは、ソウル公演の際にも十分意識した。日本という異国で長い間、民族の言葉や文化を守ってきた在日同胞の歴史、歌劇団の先輩たちが蓄積してきた歴史を両肩に担っているという責任感から、プレッシャーも相当感じた。 祖国での研修 自然に民族性が身につく/趙 ―毎年2月から4月にかけて朝鮮で研修を受けるそうだが、どういった面で勉強になるのか。 李 単に技術を学ぶのではなく、何のためにこの曲を演奏するのかという心の部分を学べる。私のように、西洋楽器で朝鮮の曲を演奏するためには、祖国で学ぶのが一番だ。歌劇団では西洋楽器と民族楽器を配合して演奏するが、その味はやはり朝鮮の講師に学んでこそ出せる。 趙 私自身は、祖国で学ぶこと自体により大きな意味を感じる。なぜなら、祖国の人々に接し、食事をし、空気を吸う過程で、身体中が祖国の色に染まるからだ。意識せずとも、自然な形で民族性を養える。 全 そう。やはり民族の味は日本ではなかなか体得できない。まして私は民謡を歌うのでなおさらだ。 民族教育 民族を守るためには当然/全 ―みなさん、朝鮮学校出身者で、民族教育を受けてきたが。 李 今だからこそ言えることかも知れないが、民族教育を受けていない自分など想像できない。 全 ウリマルを話せて、朝鮮の歌が歌える私の存在自体が民族教育の正当性を証明している。 趙 民族教育を受けていなければ朝鮮人として生きられなかった。極端に言えば、日本で民族教育がなければ朝鮮人社会もなくなってしまうだろう。 李 異国に住みながら、自己のアイデンティティーを守っていくためには、民族教育は不可欠だ。これから私たち3世、4世がきちんと守っていかなければならない。 趙 3、4世の時代になって、民族性が薄れているのは本当に恥かしいこと。それ以上に、1世の人たちが身を体して学校や民族性を守ってきたことを考えると、現状には胸が痛む。3世の1人として、4世、5世に「民族性のバトン」をきっちり渡すことが務めだと思う。私は、これからも公演を通じて民族の歴史と魂を伝える表現者、伝達者でありたい。 全 そのためにも、観客から共感を得られる公演を心がけたい。今よりもっと親近感を感じてもらえるためにも、聴衆が求める芸術を追求し創造していきたい。(構成=文聖姫記者) |