当世の相談ごと(上)

面倒背負う女性たち

金静寅


 東京上野に同胞法律・生活センターが開設されてまる3年が過ぎた。この間におよそ2500件を超える相談が寄せられた。相談の内容は相続、国籍、離婚、交通事故、借地・借家、年金、福祉、老親の扶養問題など多岐に渡り、また相談に訪れた同胞も1世の高齢の同胞から20歳そこそこの若い青年まで、幅広い年齢層であった。相談者の性別は、電話による相談も含めると、男女6対4くらいの割合。この4割の女性が抱える様々な法律問題や生活上の悩みなどから、現在の在日同胞社会における女性の地位が依然として後進的だということが浮かびあがってくる。

 日本国内で男女共同社会参画基本法ができようが、育児・介護休業法の制定準備が進められようが、自分の職場には縁もゆかりもないことと嘆息している女性たちも多いだろう。男の上司に話したところで「糠にくぎ」、男尊女卑の風潮には揺るぎがない。改めて同胞女性の置かれている現状について考えたい。

 女性からの相談の内容も先に述べたとおり様々である。しかし、相談の中で、その女性自身が当事者である場合は離婚を除いては少なく、第三者であることが多い。言い換えると、夫の家族の相続問題や、夫の会社経営や債務の問題であったり、息子の妻や孫の国籍問題であったりと直接の問題の当事者ではないことが多い。真の当事者でない限り、問題の核心が把握しづらく、適切なアドバイスもできないこともある。しかし、それよりも、ここではなぜ当事者である夫や息子が相談に来ないのかを考えてみたい。

 妻や母親が相談に来る事情もその家庭ごとに様々であろうが、家事をはじめ家庭内の面倒はすべて妻に一任する、ぐずぐずと優柔不断な夫、男の姿が浮き彫りになる。もちろん、仕事の関係上やむをえないのだろうが、それは女性も同じ。仕事の合間をぬって、職場から遠慮がちに電話してくる人が多い。また、話を聞くと、「夫がああでもない、こうでもないと悩むだけで、解決に向け動く気配がない。それで私が来ました」とか、「息子は忙しいので…」という。後者は親離れ、子離れができない母子間の相互にも問題があるとしても、女性がシビレを切らし動かざるを得ないのだ。

 決して「かかあ天下」などではなく、そうでもしないと前に進めないのだ。さらにつけ加えると男性が相談に来る場合は、妻を同伴することが結構あるのに、逆に女性が自分だけの問題で来る場合は夫には相談していないケースがほとんど。

 こういう状況を見ると、いざという時、頼りになるのは女で、女は主体的に能動的に動き、男は受け身のようだ。この辺りのところ、次回は離婚をテーマに考えてみたい。(同胞法律・生活センター)

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