新世紀へ−民族教育を歩く

シャケの帰る川


 私が生まれ育ったC市には、美しい川がある。「シャケ」が帰ってくる川だ。

 数年前、当時の西神戸初中で美術の授業を取材した際、担当の先生が、子供たちをこのシャケだと言っていた。震災の体験をもとに主題画にとりくんだ生徒達の絵には、思い出すことさえ辛い体験と向き合いながら、内なる思いを昇華させていく様がありありと表現されていた。その絵の力強さと共に、シャケの話が今でも折に触れて思い出される。近年、ウリハッキョを離れ、日本学校に転出していく子供たちの現状を考える時などがそうだ。

 そういう子供たちの事情は様々だ。100人いれば100とおりの理由があるだろう。例えば将来の夢に向け、早いうちから整った環境で学ぶことを望む場合、現在のウリハッキョでは充分に対応できない分野があるのも事実で、その選択を一概には否定できない。しかし、学校の存続のためには、理由はさておき、転出する学生を1人でも減らさなければならない側面もある。そんな中、出て行くことを選んだ子供たちが、どんな時も、深い愛情とともに思い出すことのできる、かけがえのない心の故郷を持てるよう、「この場所」から強い信頼と愛情を持って送りだしたい。シャケの例えからは、そんな思いが伝わってきた。

 「立派に成長して、生まれた川に帰ってくるシャケのように、子供達はどんな荒波も乗り越え、いつかきっと帰ってくるでしょう」

 その日のためにも、私たちの美しい川を守っていきたいと強く思う。(姜和石記者)

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