取材ノート

同胞経済と大阪朝高校


 年末年始、各地で多くの同胞商工人から話を聞いた。新年の抱負をたずねても、「不景気で商売は厳しい」と、表情は冴えない。ところが、昨年、悲願の全国高等学校サッカー選手権大会出場を果たした大阪朝鮮高級学校の話題になると、表情が一変し、「同じ同胞として、あの活躍は励みになった」「へこたれずにがんばってほしい」との元気な声が多く聞かれた。

 「同胞経済に活気を与えた」とは大げさだが、それだけの力を同胞に与えた大阪朝高の試合を、20世紀最後の日、間近で取材することができた。

 自分が出るわけでもないのに、試合前からどきどきする。同胞応援団が続々と集まり、スタンドは徐々に盛り上がる。地元・大阪や関東近県から駆け付けた同胞たち。横断幕には「イギョラ(がんばれ)朝高」の文字が躍る。

 「各種学校」扱いの朝鮮学校は、同世代の日本の選手が参加する全国大会への道を長らく閉ざされてきた。だが近年、徐々に門戸が開放され、朝鮮学校は各スポーツで実力の片鱗を見せつけている。記者の学生時代、「いつか出場できる日が来る」と信じて黙々と練習に励む同級生が大勢いた。多くの同胞の思いを背にピッチに立った、朝高イレブンの堂々たる姿が印象的だった。

 試合巧者の相手校に攻撃の芽を摘み取られ、1―3で敗れはしたが、選手の表情は晴れ晴れとしていた。後半にMF権隆旭選手がもぎ取った一点は、次につながる一点となった。

 個と個、チームとチームが勝利を目指して激しくぶつかりあう真剣勝負のだいごみ。試合が終わった後の選手のさわやかな笑顔は見る者を感動させる。体を動かすのは苦手な記者だけに、自分にはできないことを成し遂げてくれる選手の姿には大いに励まされる。

 「来年も来ます」と、選手たちは宣言した。全国の同胞の希望の星であり続けてほしい。(柳成根記者)

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