5全国大会の門戸開放
日本サッカー協会、同胞チームの出場制限緩和
日本サッカー協会(JFA)は18日の理事会で、在日朝鮮蹴球団、各地の朝鮮学校サッカー部など外国籍選手が6人以上のため「準加盟」扱いとなり、都道府県レベルの大会・リーグまでにしか出場が許されていなかったチームに対し、今年4月から、全国大会・リーグ参加(地域大会・リーグ含む)への道を開くことを決定した。今回、参加資格が認められたのは、JFAの主催する日本フットボールリーグ(JFL)、全国社会人大会、全日本ユースの18歳以下と15歳以下の両大会、全日本少年大会――の5つ。朝鮮大学校サッカー部の全日本大学サッカー選手権、関東大学リーグへの参加資格も、全日本大学サッカー連盟の承認を経て近く認められる見込みだ。これで、すでに全国大会出場資格の認められていた中、高級部を含め、初級部、大学校、一般まですべての在日同胞チームに、国体と天皇杯を除く全国大会・リーグへの道が開かれることになった。(韓東賢記者)
長年の運動、働きかけ実る/同胞サッカー発展の転換点に 日本サッカー協会(JFA)による準加盟チームへの門戸開放措置は、すでに実現していた中学・高校レベルでの門戸開放同様、在日同胞サッカー関係者の長年の運動の成果だ。在日朝鮮蹴球団、在日本朝鮮人サッカー協会はもちろん、各地の朝鮮初級学校の指導者たちは「定住外国人少年サッカーチームの全日本少年サッカー大会への参加を求める全国連絡協議会」を結成し、要請を重ねてきた。 JFA側は今回、制限緩和措置を取った理由を明らかにしていないが、発表の際、記者会見での質問に対して「歴史的経緯がある」と答えていることからは、在日同胞サイドの働きかけにより、この問題が協会にとって長年の課題となっていたことが伺えよう。そのために尽力してきたJFAの関係者も少なくない。 今回の措置は、同胞サッカー界の発展において大きな転換点となる。 まず、サッカーを愛し親しむすべての年代の朝鮮学校児童・生徒・学生に全国大会への目標ができ、その活躍の場が広がった。とくに技術習得において最も重要な時期とされる初級部で初めて全国大会参加への道が開かれたのは、同胞サッカー界の底辺拡大につながる意義がある。また初、中、高の民族教育システムにおいてより体系的な選手育成が可能になった。 さらに、全国に8つある地方蹴球団を活性化させる契機にもなる。これまで京都朝鮮蹴球団は11回、大阪朝鮮蹴球団は7回、府の社会人リーグ一部で優勝しているが、準加盟規定の壁により、関西リーグへの入れ替え戦には出場できなかった。今後はこの壁がなくなり、上を目指せる。 各地方蹴球団が都道府県リーグで活躍して地域リーグに昇格することによって同胞社会でサッカーに対する関心がより高まっていけば、在日朝鮮蹴球団が同胞サッカーマンの受け皿としてアマチュア最高峰のJFLを目指していく環境も整うだろう。 規定はいまだ「都道府県まで」/準加盟チーム外国籍選手6人以上 今回、JFAはこのような準加盟チームへの出場制限を緩和したわけだが、この規約には手を加えていない。規約同条には「ただし、当該競技会の主催者が出場を認めた場合はこの限りではない」という但し書きがあり、これを適用した。 過去にも、同じ方法で「特例」として全国中学校体育連盟(中体連)や全国高等学校体育連盟(高体連)が主催する中高生の全国大会の門戸を開いてきた。従って、朝鮮中・高級学校チームの位置づけも準加盟のままだ(中学、高校の協会加盟は中体連、高体連のサッカー部を通じて行う)。 つまり今回も、あくまで「例外的」に出場を認めるということで、プロ、アマ、社会人、学生を問わず、サッカーチームの頂点を決める天皇杯日本選手権への参加は見送られた。18日、記者会見したJFAの森健兒専務理事は、天皇杯参加やJリーグの外国人枠(5人+「特別枠」1人=詳細7面)の拡大など、より門戸を開いていく可能性については「まだなじまない」という理由で否定。さらに、「まだ全国的レベルで強いチームは多くない」と強さの問題まで持ち出した。 しかし、それは順序が逆だという指摘がある。いくらがんばっても上にあがれない状況のもとで、勝利への執念を保つのは難しいというのだ。在日同胞サッカーチームのレベルが低いと言うのなら、上への目標と切磋琢磨する機会を奪われ続けてきたのも間違いなくその一因だろう。 実際、94年度からインターハイ、96年度から全国選手権への参加が認められてから、朝高サッカーのレベルは向上している。 九九年度インターハイ、この冬の選手権に大阪朝高が出場し、九七年度の選手権では東京朝高が都大会の決勝まで進んだという事実は、こうした指摘を裏づける。 もちろん、今回の決定は在日同胞サッカー界の発展を促す契機となる大きな前進で、同胞社会も歓迎している。ただ、国際化の流れの中で、また在日同胞の場合はその歴史的経緯との関係の中で、スポーツマンシップに則った機会均等へのさらなる見直し、本質的な転換が必要となってくるだろう。 Jリーグの特別枠 日本のプロサッカーJリーグでは、日本国籍を持たない外国籍選手の契約は一チームにつき5人までとなっている。しかし、外国籍であっても学校教育法による「一条校」を卒業した選手には、この外国人枠と別に1チーム1人という「特別枠」の適用も可能だ。この規定は、日本サッカー協会の規約に従ったものだ。 これまでJリーグでプレーしたほとんどの在日同胞選手がこの枠で登録していることから、別名「在日枠」とも呼ばれる「特別枠」は、1993年のJリーグ発足時からあった。設置経緯については定かでないが、当時、「フランス代表より落ちるが日本代表よりはるかにうまい」(事情に詳しいジャーナリスト談)ミッシェル宮沢というフランス国籍の選手を、どうにかJリーグに入れるために設けたとの説が関係者の間では定説となっている。 しかしその後、実際にこの枠が適用されているのはほとんど在日同胞選手だ。日本が朝鮮を支配したという歴史的経緯から、今も在日外国人の6割強が在日同胞である。また1チーム5人の外国人枠をワールドカップクラスの選手と競うのを避け、同胞選手が特別枠を目指してJリーグ入りを狙うのは当然だろう。 そうした同胞選手には「一条校」出身者もいるが、サッカーの盛んな朝鮮学校出身者も多い。しかし特別枠には「一条校」規定があるため、朝高生はJリーグに入るために通信制や定時制高校とのダブルスクールをして高卒の資格を得なくてはならない。 すでに高校レベルの各種全国大会では「一条校」の壁が取り払われ、朝高の参加が認められている。試合への参加を許しながらプロを目指す段階で「一条校」の壁を設けるのは機会不均等であり、職業選択の自由を奪う不当な措置だと言えよう。特別枠の「一条校」規定の是正は、当面した次の課題となる。 |