現場から−呉明淑(朝青広島県本部副委員長・26)

統一への思いを共通項に

コリアンによるラジオ番組  本音トークで信頼築く


 この春、私は生まれて初めて「自分の声が電波に乗る」という経験をした。それが今では日常になった。「ラジオの収録」――この言葉が私の予定表に当たり前のように書かれている。

 「ウリンアリラン」は今春から広島市の地元FM局、広島Pステーションでスタートした在日コリアンによるラジオ番組だ。毎週土曜19時からの放送で、出演者は、パーソナリティーを務める李和枝さん、アシスタントの真志田和江さんと在日コリアンのボランティアスタッフ7、8人。みな20、30代だ。

 ボランティアスタッフはローテーションでそれぞれ月2回ほど出演するが、メンバーの顔ぶれはさまざまだ。民族教育を受けた者もいれば日本学校卒の同胞もいる。私のように朝青で働いている者もいれば、民団青年会のメンバーもいる。

 その面々が仕事、恋愛、友達、家族、祖国、また人生に対する考えを本音でトークする。番組では「朝鮮半島ニュース」や北南朝鮮の観光スポット、流行、音楽、また在日コリアンの情報が流れるが、それをネタに北と南の違いや共通点を話したり、意見を述べたり、まさに「在日の日常」を電波に乗せている。

 スタッフに、同じ広島市西区福島町出身の民団青年会のオッパ(朝鮮語でお兄さん)がいる。

 日本の教育を受けた彼は学生の頃、同胞の友だちを作りたいという一念で、担任の教師に自分のほかに同胞がいるのか、と質問したことがある。しかし、その教員は在日コリアンの存在を隠したがったという。

 ずっと民族教育を受けて育った私は、社会人になるまで朝鮮学校の外の世界を知らなかった。しかし、このようにさまざまなバックグラウンドを持った同世代の同胞と知り合う過程で、自分が経験したことのない、知らないことがたくさんあることに気づいた。現在、県内の日本の高校で朝鮮語を教えているが、日本の学校で学ぶ同胞がどのような思いで生きているのか、興味は尽きない。

 もちろん、育った環境が違えば考え方も違う。しかし、彼らといると、「違い」よりも互いに通じ合うものを感じる。コリアンが日本で幸せに生きていくためには祖国の統一と平和が必要だとみなが心から思っている。「在日コリアン」「統一を願う気持ち」を共通点に、一つの空間が生まれる。

 私はここで新たな発見をした。同胞同士、一つになれるということを。

 「ウリンアリラン」には、多くの日本人スタッフも関わっている。

 在日トークに日本人として参加する彼らは、「それってどういう意味?」「そういう時ってどんな気持ち?」などと率直に聞いてくる。彼らの感想、意見を聞いて私がビックリすることもある。コリアンと日本人が本音で話し合える場を、電波を通じていろいろな人と共有する。とても新鮮で何といっても楽しい。

 番組を聞いた日本人リスナーから「在日コリアンが周りにこんなにいるとは思わなかった」「今まで聞けなかった(聞いてはいけないと思っていた)ことをボンボン話している」「タブー視してきた朝鮮半島の問題を本音で語っている」などの感想をいただいた。

 在日コリアンと日本人が本音で語り、ともに考え、答えを探していく。これからの日本社会がこんな風になればいいな、と感じている。

 そのような意味で「ウリンアリラン」は「未来の縮図」だと思う。

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