公安調査庁の外国人登録原票違法調査事件
緊急集会の発言から

同胞、総聯の動向を把握―人権踏みにじる公調

洪敬義・近畿人権協会会長


 公安調査庁(公調)は今年4〜8月、破壊活動防止法(破防法)27条に基づく「破壊的団体の規制に関する調査のため必要」として、多くの自治体でほぼ一斉に400人以上にわたる在日同胞の外国人登録原票の写しを入手していた。目的は@在日同胞の動向を定期的に把握、監視しようとする治安管理政策の日常的活動の一環A民族団体、とりわけ総聯の活動の内部事情を把握すること――だった。時期的に見ても5月の総聯第19回全体大会後の人事や民族金融機関再建問題に対する情報収集が目的だったと見られる。大阪市内のある同胞が市の個人情報保護条例に基づいて公調からの依頼文書の開示を請求したところ、1999、2000年、連続して原票が開示されていた。この事実を見ても、公調が同胞に対する調査を日常的に行っていたことは明らかだ。

 問題は、法務省が公調の情報収集にお墨付きを与えていたことだ。法務省入国管理局登録課補佐官は昨年12月26日、東京都区市町村外国人登録事務主管課長あてに通知を出し、公調から破防法に基づく登録原票の開示請求があった場合、原票の写しを渡しても構わないとしている。昨年12月といえば関西地方では興銀や朝銀が破たんした。民族金融機関の破たんを機に、公調が同胞の動向を集中的に調査できるようにしたのだろう。

 公調は破防法により設立された団体だが、これだけの非人権的な行為を見ると、公調が日本の民主主義と人権を根本から覆す集団だと憤りを覚える。総聯を破防法の適用容疑団体としていることにそもそもの問題がある。

 オウム事件以降、ますますその存在価値が疑問視され、リストラの第一候補とされている公調は、予算と人員を確保しようと躍起になっている。また、事件の背景には、小泉首相の靖国神社参拝や歴史わい曲教科書の検定合格に象徴される日本の右傾化の流れがある。

 米国へのテロ事件に便乗した自衛隊の海外派兵、有事体制の確立論議がアジアの国々に日本の軍国主義復活への懸念や怒りを呼び起こしている時に起こった在日朝鮮人に対する人権侵害は、日本に対するアジア諸国の信頼を大きく失墜させるものだ。

在日朝鮮人を治安視―公安への開示、日常化/田中宏・龍谷大教授

憲法違反、破防法乱用―法発動の要件そろわず/空野佳弘・弁護士

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