夢は「世界の頂点」
F1ドライバー目指す 金太景さん
「フォーミュラカーレースの最高峰、F1に参戦して、世界の頂点を目指したい」――。筑波サーキットを拠点にプロ育成のためのスクールを開校している、ウィンズレーシングチームに所属する金太景さん(21、埼玉県草加市)は、国際舞台出場に向けた大きな夢を抱いている。
今年3月から筑波FJ1600選手権シリーズに参戦。このシリーズで経験と実力を積んで、FT(フォーミュラトヨタ)あるいはF4などで活躍し、F3、さらにはFNで好成績を収めれば、F1への道が開かれる。そのためFJ1600レースは、プロを目指すドライバーにとってはまさに登竜門だ。 このクラスは、タイヤやエンジンなど、マシンの性能を左右するものはすべて規定されたものを使用しなければならない。選手全員がイコールコンディションでレースに臨むだけに、勝つための条件は何よりもテクニック、そして運である。 デビュー戦となった3月の第1戦は堂々の3位。以来、第2戦6位、第3戦3位、第4戦23位、第5戦12位の成績を収め、現在のシリーズランキングは42台中6位。14日に第6戦、11月には第7戦を控えており、年末に行われる日本一決定戦(全国7エリアのシリーズチャンピンと上位ランカーが競う)出場を狙っている。日本一決定戦の勝者には、F3へのスカラシップや海外レースへの参加チャンスが与えられる。また決定戦でチーム内上位2位に食い込めば、ワンランク上のFTに出場することができる。 ◇ ◇ モータースポーツは、ヨーロッパではすでに1世紀近い伝統を持つ。日本では1922年に初めて自動車レースが行われた。レーシングカート競技が導入されたのは58年からで、50年代中盤に始まった遊園地のゴーカートが人気に火をつけたともいわれる。以来、若者たちの間に定着した。 ◇ ◇ レースに興味を持ったのは、北海道朝鮮初中高級学校中級部2年の時。友人に誘われ、レンタルカートにチャレンジしたのがきっかけ。「そこそこのタイムを出せた」。高校時代はスキーの名門校、札幌第一高校スキー部で頂点を目指したものの結果を出せず、卒業と同時にスキーの道は断念。「目標を見失っていた」時、中級部時代に体験したレンタルカートに再び出会う。「この世界なら何とか頂点を目指させるのでは」と思ったという。 そして、現在所属するチームの「第15回ウィンズドライバーオーディション」を受けた。見事1回で合格し、「ウィンズレーシングスクール」に入学した。在校生300人中、毎年20人にしか与えられないデビューへの道をわずか2年でつかんだ。そして今年3月から筑波のコースを走ることとなった。 しかし、モータースポーツの世界は、実力や気持ちだけで頂点を目指すのはとても困難で、実費がかさむ。1シーズン数百万円。そのため、金さんはレースと練習以外の時間はリゾート関連会社でアルバイトをしている。まさに生活全体がレース中心に回っている。 レースを左右するのは、「集中力」「資金力」「技術力」の3つ。ドライバーはアクセルを踏み続け、ブレーキを我慢してコーナーを誰よりも早く抜け出すことをめざす。 「最高時速230キロで走るだけに、一瞬の判断が危険を招いたり、勝敗を決める。それだけに、自分が当初考えたようなレース運びができた時が何よりもうれしい」という。「F1レースに出場し、勝利することが目標」と語る金さん。現在、勝利の喜びをともに分ちあってくれるスポンサーを探している。(羅基哲記者) |