混迷の日本経済診断〈1〉

需要減少、在庫過剰に

大手企業までリストラ


ITバブルの崩壊

 4〜6月期GDPが年率でマイナス10.39%となり、景気後退が一段と深まり回復の兆しが見えない日本経済。現在の状態をマスコミなどは「瀬戸際の日本経済」「複合不況」「待ったなし日本経済」などと形容している。何が根本問題なのか、日本経済再生のけん引役、糸口と対策は何かなど政界、財界、学会で論争が絶えないが経済再生のシナリオは見当たらない。

 日本経済再生のため論点になっているものの中から3点を選び、同胞企業との関連の中で取り上げる。

不況の張本人に

 まず今回は、ITバブル崩壊の影響について。

 日本でITとかIT革命という言葉が公的文書やマスコミでさかんに使われるようになったのは、2000年に入ってのことだ。

 インターネットによる新たな情報通信ネットワークが本格的に利用されるようになり企画、生産、取引、管理、流通のすべての経済・経営分野で革新が起きその影響は絶大なものだった。それが「IT(ネット)バブル崩壊」と言われ不況の張本人として扱われている。「情報革命」への期待が株式市場を媒介に膨れ上がりばく大な仮需要を生み出し、この仮需要が実体経済を巻き込み、それが詰まりIT不況へと変身した。

米テロの影響も

 日銀短観(10/1発表)によると大企業、製造業の景況感は3期連続で悪化し、景気が一段と後退している現状を裏付けている。IT景気の主役だった電気機械部門は25ポイント下落のマイナス60ポイント。IT産業の不況が幅広い業種に波及していることを証明した。

 落ち込んでいる分野は第1に、パソコン出荷台数の減少とそれに伴う半導体需要の減少である。日本の半導体生産はこの1年(2000.8〜2001.8)で41%の生産減少率になった。世界的には半導体生産能力の3割が過剰といわれ約100以上の半導体工場が閉店休業している。

 第2に、通信インフラ分野と携帯電話需要の見込み違いで過剰設備、過剰在庫が顕在化したことだ。世界的に通信網の光ファイバーやブロードバンド(高速大容量)通信の需要拡大をにらみ年率5倍のペースで増大したが、実際は2倍しか伸びずその稼働率は10%に満たないと言う。

 また、登場7年の携帯電話は去年、年間4億台の需要があり今年は5億台を見込んだが、前年止まりで過剰在庫を抱えてしまった。これが素材産業の非鉄(精錬、電線部門――プリント基板用銅はく、光波長分割多重伝送用部品等)、化学産業まで飛び火した。

 第3に、アメリカのテロによる影響。IT関連部品の輸出が急激に減少した。

雇用問題深刻化

 半導体・電子部品メーカー36社のアンケート(日経新聞社、10月)によると、今年のコンデンサー、フラッシュメモリー、半導体など部品生産の減少幅は28.8%。投資計画では30.1%減額している。投資額にすると去年の3兆7000億に比べ今年は2兆3000億に落ちている。(電機メーカー今年度出荷計画下方修正。日経新聞10月7日付参照)

 また、東京都区部の8月消費者物価指数(総務省、8/31発表)ではパソコン販売が急減し、その価格はデスクトップ型で39.5%、ノート型で37.4%下落している。これに伴い日立製作所、東芝、富士通、NECなど「IT大手7社」では国内外で8万人の人員削減計画を発表、海外工場の閉鎖、売却も計画している。リストラによる雇用問題が一段と深刻化していく。

 最悪のケースは、半導体など生産財の減少が長引き設備投資減少、解雇、従業員の所得減少を通じて生産調整が生産財まで及び、これがまた最終需要財の減産に影響し生産財が在庫増大、在庫調整と言う悪循環になることである。

 同胞企業への影響としては直接には部品下請業者への発注減少、パソコンを始めとするOA関連機器の小売店売上の減少、そして多くはIT関連産業に従事している勤労者の所得減少、もしくは解雇による消費縮小で飲食業、レジャー産業の客単価が落ち込むことが予想できる。

 同胞企業は企業経営にコンピューターを導入しインターネットの利用度を高めホームページを開設して、より積極的な経営を心がけることが望まれる。

 日本の情報通信産業の市場規模は情報サービスまで含めて約30兆円。この失速の影響は大きいが在庫調整がいつ終わるかがセカンドステージの鍵となるだろう。
(ユン・ピルソク、朝鮮大学校経営学部長)

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