取材ノート
「忙中閑あり」、貴重な対話
ニューヨークでの例の事件以来、会う記者たちの口をついて出てくるのが、米国が報復攻撃をどのレベルまで、そしていつまで続けるのかという話である。
朝鮮問題担当記者たちは「忙中閑あり」。材料がないわけではないが、よほどのボリュームがないと記事は掲載されず、「一種の言論統制だ」とぼやく。 「いつもは忙しいのだから、いい充電の機会だと思えば」と励ますのだが、ぶらぶらしているわけにもいかない。 そんな折、クリントン政権時代に国務省の北朝鮮担当官をし、その間の朝米対話のやりとりの一部を本にした、米NGO団体マーシー・コーのキノネス代表がぶらりと来日した。変わらぬ豊満な体躯、人なつっこい表情は健在だった。 久方ぶりに水にありついた砂漠の放浪者のように、さっそくヒントを得ようと顔見知りの何人かが彼を囲んで、「ニューヨーク・レポート」に耳を傾けた。 ところが彼は、事件直後に米国を出国、ソウルのセミナーに参加していたので「期待するような話のネタは持ち合わせていない」という。 それでも、「朝鮮国連代表部は事件の影響を受けていないのか」「朝鮮に滞在中のNGO職員たちの近況は」など、あれやこれや質問が相次いだ。 ひとしきりレポートを終えると、今度は彼の番である。「ソウルに行くと実に雑音が多い。閣僚級会談、金剛山観光の今後の展望は」「日本の外務省の不祥事は、日朝対話にどのような影響を与えているのか」「小泉首相―田中外相のコンビは国交正常化について具体案を考えているのか」。 持ち合わせている情報は多くはなかったものの、それでも「餅は餅屋」、貴重な話が行き交った。 キノネス氏は来年にも続編を出版する予定で、現在、メモ類の整理に余念がないという。今から楽しみだ。(彦) |