閑話休題
緑のチョゴリ
民族衣装と在日同胞
1カ月ほど、「語り継ごう20世紀の物語」の取材のために広島に住む、金桂和さん(64)に話を聞かせてもらった。
部屋に鮮やかな緑のチョゴリがかけてあった。翌日甥の結婚式に出席するということだった。 取材を一通り終え、写真を撮らせてもらった。もちろんそのチョゴリを着てもらった。金さんの写真を撮りながら、1つの短歌を思い出した。 「異国の地/生まれて祖母の/60歳/祝う私の/チマチョゴリ」 ある朝鮮学校の教室の壁に張り出されていた、作品の中の1つだ。 金さんが通うチョング学習会で、1期生の卒業を控えた去年、ハルモニたちの半生を記録した本、「サンナムルを採りに―他郷に生きて」が発行された。ハルモニたちが日本に渡ってきて、いかに苦難の半生を生きぬいてきたのかが綴られている。もちろん金さんも登場する(チョング学習会とは、学校に通えなかった在日1世のために1995年開かれた成人学校で、広島県立西高等学校の先生が中学校程度の勉強を教える場である)。 この本に収録された、ほとんどの話に「チマ・チョゴリ」についての記述が出てくる。学校の授業参観には、オモニが必ずチョゴリを着てきたこと、一張羅のチョゴリを誤ってアイロンで焦がしてしまったことなど。それが白いチョゴリであれ、カラフルなチョゴリであれそれぞれ思いは異なるが、チョゴリを抜きに、在日同胞の歴史は語れないのだと思った。 この民族衣装への1、2、3世…の思い入れを、色んな人に聞いてみたくなった。(香) |