朝鮮の子どもに暖かい冬を

日本のNGO4団体共同コリアこどもキャンペーンが報告会


託児所の屋根の上に取り付けられた太陽光発電用のパネル
 日本の4つの非政府団体(NGO)が共同で朝鮮の子どもたちを支援する「KOREAこどもキャンペーン」による太陽光発電支援プロジェクトのビデオ報告会が12日、都内で行われた。同キャンペーンでは今年7月、継続的に支援を続けてきた平壌市郊外のテガン協同農場内の託児所の屋根に、太陽光発電装置(最大4キロワット)を取り付けた。こどもキャンペーンという形での支援は1997年から続けられてきたが、国連・世界食糧計画を通じて食糧などを送る当初の形から、徐々に特定の農場や学校、託児所に対象を定めて支援を続ける形に変わった。現地訪問も度々行っている。そのうちのひとつがテガン協同農場で、99年から交流が始まった。プロジェクトの中心となったNGO「ラブ・アンド・ピース」の藤澤房俊代表の報告内容を紹介する。

様々な困難乗り越え

 昨年3月に訪朝した時、テガン協同農場の責任者がポロッと漏らしたのが「ここでは真冬は零下20度にもなる。大人は我慢するしかないが、子どもたちだけでも暖かく過ごせるようにしたい」という言葉だった。

 何か具体的に支援できないだろうか――。私たちの問いかけに対し、朝鮮側から出たアイデアは朝鮮でも試験的に行ったことのある風力発電だった。だが、テガンは風が弱く、コストもかかるため市民運動レベルの支援では不可能だと分かった。

 そこで思いついたのが、朝鮮では前例のなかった太陽光発電だった。8月に現地調査のために再び訪朝し、本格的な準備に取りかかった。

 私たちは窓口となっている朝鮮側関係者に対し、太陽光発電は深刻なエネルギー不足の解消への一助になるのはもちろん、石油・石炭、さらには原子力に替わるクリーンかつ安全なエネルギーであることを力説。ゴーサインが出た。

 某有名業者に見積もりを出してもらったところなんと2000万円。それもよく分からない項目が多かったのでやめた。次に訪れたところは趣旨を聞いて当初は無償支援を申し出てくれたものの、後になって「企業イメージが…」という理由で断ってきた。なかなか思うように進まなかった。

 朝鮮側に約束した取り付け期日は寒さが本格化し始める11月だった。私たちは仕方なくその冬の取り付けは断念し、テガンの託児所に石炭購入費用を送った。

 でもあきらめたわけではなかった。日本で設備を購入しようとするとすべて一式セットになっていて高いことから、パーツごとにインターネットを通じて海外から注文して購入、組み立てるという方法に切り替えた。

 こうしてコスト面はなんとかクリアしていったが、さらなる難関があった。購入したパーツを朝鮮に搬入するのに、ワッセナー条約(旧ココム条約)が立ちはだかった。そのため、使用用途などを明らかにする書類作成など、通関手続きが最も骨の折れる作業だった。新潟港でも、ひとつひとつ何に使うのか細かく質問されて参ったが、初めてのケースだということですべていちいち説明した。そういう手間はあったが、無事、すべてのパーツを持って行くことができた。

 発電設備とともに、託児所の乳幼児の部屋で使う電気毛布15枚と6畳用の電気カーペットを2枚、また作業後、発電を視覚的に確認するための電気ストーブと扇風機各1台、そしてちょっとした子どもたちへのプレゼントのおもちゃなども持っていった。

市民ができること

組み立て作業に取り組む日本の大学生と現地の農場員
無事電気じゅうたんに電気が通り、子どもたちは「あったかいよ!」。でも夏なので実は暑い

 1日目の説明から始め、取りつけには4日かかった。うだるような暑さの中、私や同行した3人の学生たちと現地の農場の人たちが一緒になって作業した。

 作業4日目、とうとう設備が完成し、電気が流れた。託児所内の電気ストーブが赤く灯り扇風機が回って風が吹いてきた時は、そこにいたみんなが拍手をし歓声をあげて喜んだ。

 今回の最大の成果の1つは、子どもに暖かい冬をプレゼントできたのはもちろん、現地の人と一緒に議論して、調査して、準備を積み重ねて、共同で作業したことだ。

 まさに「一方通行の支援」ではなく「双方向的な理解」の始まりとなったが、これは、こどもキャンペーンが継続的に支援活動を行い、現地にも度々足を運んで信頼関係を築いてきたからこそできたことだ。物資だけ送りモニタリングも困難だった関係から、冗談も言いながら共同作業のできる関係へと発展した。国交がないなかで、市民としての役割を多少でも果たせたと思っている。

 今回、第2弾のための調査もしてきた。来年3月を目途に、確定ではないが平壌市内の育児院(孤児院)に2機目の太陽熱発電装置(5キロワット)を設置しようと募金を行っている。また今後も調査やメンテナンスなどのために定期的に現地訪問を続けるので、その際にはこれまでのような食糧の支援なども続けていく。

 太陽光発電による暖房の暖かさで、日朝関係の冷たい壁も溶かしていきたい。市民としてできることを積み上げていくのが大切だ。

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