混迷の日本経済診断〈2〉

不良債権の処理、景気回復の足引っ張る

株安、倒産、失業者増加


 1990年代に引き続き、2000年代に入っても日本は不良債権に苦しめられている。日本政府は不良債権処理を公約し対策をとったにもかかわらず、減少するどころか、処理した額を上回る不良債権が新たに発生しているのである。

 不良債権は率直に言えば投資の失敗である。当然、投資に失敗した経営陣にはペナルティーを与えなければならないが、金融機関の場合、預金保護、債務の連鎖などから一般企業とは同じ扱いができない。ペイオフも1年延期した。

 それに過剰債務を抱える企業を清算するとなれば大変な混乱が生じる。

 金融のセンターである銀行が不良債権を処理するため貸倒引当金(注1)を積んだり(間接償却)、バランスシートから完全に落としてしまうと(直接償却)自己資本比率を下げてしまうというジレンマがある。これが銀行経営を硬直させ、金融の流れを妨げ景気回復の足を引っ張っている。まさに不良債権の処理がネックなのである。

過去最高の不良債権

 不良債権処理問題は年中、マスコミなどで取り上げられているので、一般庶民は完全に処理されたものだと錯覚するほどだ。しかし、ふたを開けてみると残高は減少するどころか増えている。

 金融庁の発表(日本経済新聞2001年9月12日付 )によると、新たに発生した不良債権(2001年3月末)は都市銀行や地方銀行など全国137行で8兆6000億円発生。これで銀行全体の不良債権残高は、前年同期より2兆1000億円多い32兆5000億円となった。これは過去最高額である。

 内容を見ると、大手18行で4兆3000億円が新規発生した。最終処理額は4兆8000億円で不良債権額は減っているが、地銀・第二銀行でさらに4兆4000億円が新規発生し、最終処理額の1兆7000億円を大きく上回った。

 不良債権が新たに発生した理由は第1に、資産査定の厳格化によるものだ。とくに今年3月、地銀・第二銀行に対する貸し出し資産、地価下落による担保価値の減価などを厳格に査定した結果増えたといえる。第2に、景気悪化に伴う業況不振で元本や利息の支払いが3カ月以上延滞したり、経営破たんしたりする企業が増え不良債権が新たに発生した。

 また大手銀行の、回収に懸念がある貸出債権、つまり要注意先債権の8.4%がこの1年(2000年3月〜2001年3月)で不良債権になったことから、日本政府は要注意先債権の洗い直し作業を進める新しい政策の枠組みを固めている。

要注意先債権の洗い直し

 現在、不良債権処理の論点は、公的資金はまだ必要なのか、処理すべき不良債権を誰が決めるのか、過剰債務を抱える企業を清算するか再生させるか等だが、とくに注目されているのが要注意先債権の洗い直しだ。というのは、要注意先債権の中に不良債権になりかねない予備軍が大量に含まれている恐れがあり、これが銀行経営を不安にさせているからだ。

 バブル崩壊後、資本デフレで不動産、建設、流通業界を中心に不良債権が大量に発生した。このうちかなりの不良債権が処理されたと考えられるが、問題は銀行がこれらの主な企業に追い貸しを続けたことだ。これらは要注意先債権に分類されていたが、実はこれが不良債権化している。9月に民事再生法の適用を申請した大手スーパー「マイカル」のように、債権分類が不正確で、要注意先債権に対する引当金が微々たる額のものは不十分とされている。

 金融庁は、要注意先債権の査定を強化する方針を打ち出し、対策に乗り出した。

 まず、要注意先債権の中に隠れている不良債権を洗い出すため、2年に1回だった検査を1年に1回とし、銀行の融資企業に対する自己査定が適正かどうかを判定する。また、銀行が不良債権を処理しやすいよう不良債権の買い取り価格を簿価の20〜30%に引き上げ、整理回収機構(RCC)の機能を拡充する方針である。

困難な資金調達

 5年間金融緩和しても依然銀行の貸し出しはマイナス。リスクのない国債を買っている。資金はあるが貸し出しが伸びないので景気は良くならないという構図である。

 一方、9月から「時価会計制度」が導入され、株価低迷が銀行の収益と資本を直撃している。

 この制度により、保有株式のうち時価が簿価(注2)の5割以上下回った銘柄は評価損を計上しなければならず、有価証券の含み損の6割を自己資本の一部である剰余金から差し引かなければならないからだ。銀行は引当金を増やさざるを得なくなり、資本不足に陥るようになり一段と金回りが悪くなる。

 景気悪化の悪循環による株安、企業倒産、失業者増加、そして米テロ事件の影響で世界経済が冷え込み、企業は当分、不況の暗闇の中をさ迷うことになる。

 不良債権問題は銀行の金融技術の未熟さによるものだ。不良債権を作ったのは投資技術が未熟な経営陣の責任であり、処理をじん速にできなかったという与信(注3)管理技術の未熟さにある。にもかかわらずその影響は中小零細企業と一般勤労大衆が受けるところに資本主義の悲劇がある。同胞企業においても資金繰りが焦点。朝銀信用組合の再建は急務である。(ユン・ピルソク、朝鮮大学校経営学部長)

 【注1】貸倒引当金  将来生じる可能性のある貸倒れ(受取手形、売掛金、貸付金)損失に対して準備しておく一定の金額。

 【注2】簿価  帳簿価額のことで取得原価(購入代価+諸経費)を帳簿に記録した金額。

 【注3】与信  信用を与えることで金融機関が貸し付けること。

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