私たちのうた

金光現


肉体

 光州学生事件の血しぶきがあがったとき
 わたしは十にも満たない少年で
 ひどく体が弱く病床に伏せていた
 興奮を抑えきれなかった兄は私をのぞきこみ
 「朝鮮が独立すればお前もうれしいだろ?」
 「うん」
 わたしも目を輝かせた
 「独立のために日本兵と戦わなきゃいけないぞ」
 「独立は嬉しいが戦うのは嫌だ」
 「何だとこの日本の手先…」
 雷のような声と同時に降りおろされる握り拳
 しばらくの間殴られながら私は泣くこともできなかった
 兄はただ地を打つように私を打ち
 「かたきをとれないものは死んでしまえ」
 わたしはただ体が痛くておいおいと泣いた
 家族のものが駆け寄ったとき
 私は私よりむせび泣く兄を見た
 泣く兄を憎むこともできず
 日本の手下と言われたこともいやで
 一緒にいつまでも泣いた
 泣きながらぼんやりと兄の愛を感じた
 救国の精神を分かったような気がした
 そして二十年が経っても
 国のかたきをとれないまま
 咽を焼かれ、全身が擦り減り
 昔日のように病床に伏している
 このみっともない肉体に
 兄よりも深い愛情はそのままぶつかり
 わたしは何度も
 医師の言葉を無視して立ち上がった
 ああ、愛する人々よ
 骨だけ残ったわたしの肉体に鞭を打て
 わたしの肉を休ませるな
 わたしの体を俊敏にしてくれ

 キム・グァンヒョン  越北詩人。主な詩に「飢餓線で」、「呂運亨先生」。詩集に「前衛詩人集」など。(訳・全佳姫)

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