在日朝鮮人中等教育実施55周年中央大会

記念公演、教職員らに表彰も


 在日朝鮮人中等教育実施55周年記念中央大会が20日、東京朝鮮文化会館で開かれた。

 総聯中央の許宗萬責任副議長が朝鮮教育省からの祝電を紹介し、徐萬述議長が記念報告。全組織が民族教育事業を活動の中心に置いて新世代をはじめとする同胞の団結した力で守っていこうと訴えた。とくに、朝鮮学校の児童生徒数を増やす問題に力を入れ、民団同胞や組織に属さない同胞、日本国籍の同胞にも安心して入れてもらえるような運動を展開して民族教育事業の新たな開花期を開いていこうと呼びかけた。

 大会では朝鮮政府から長年功労のあった教職員に「人民教員」などの名誉称号、民族教育を支えてきた個人とオモニ会などの諸団体に対する表彰状がそれぞれ伝えられ、各界を代表して6人が決意を述べた。大会後、東京朝鮮中高級学校生徒による記念公演が行われた。

 名誉称号を授与された教職員の中から4人に話を聞いた。

「柱」を育てる喜び

兪基奉(60、中大阪初中校長)

 下関から始まった37年間の教員生活。教え子がさまざまな分野で活躍する姿を見ながら、民族教育こそ同胞社会の「柱」を育てる在日朝鮮人運動の生命線だということを実感している。

 忘れられない出来事は、11年間教員を勤めた大阪朝高で女子バレーボール部が府高体連への加盟を一旦認められながらも春季大会予選直前に突然出場を断れられた事件(90年)だ。生徒の涙を見ながら、どんなことがあってもこの子たちの夢を叶えなければと思い、朝高の高体連加盟を実現するため頑張った。事件を機に世論は一気に高まり94年、ついに高体連は大会の門戸開放を決定。全国大会で大阪や広島の朝高サッカー部が活躍する姿を見るたび、誇りと喜びを感じる。

 生徒たちが大きな舞台で力を発揮できるよう、彼らの精神、知識、技術をどう育てるかが21世紀の民族教育に課せられた課題だ。

 なんといっても生徒あっての教員、学校。深刻な生徒数の減少をどう食い止め、学校を同胞社会の求心力とするか。現場で地道な努力を続ける決心だ。

今後も基本はウリマル

李花淑(54、東京中高中級部教務主任)

 30年を超える長い教員生活の間で思い出深いことはたくさんあるが、自分が以前教えた生徒の子どもをまた教えることになる時は、いつも感慨深い気持ちになる。同時に、この子の親の時、もっとちゃんとしてあげられればよかったのにといつも後悔の念がよぎる。あの頃は若くて気持ちはあっても経験がついていかなかったから…。でも、その時の分までもっと愛情を注いで教えようと、気持ちを引き締める。

 民族教育の核は、ひとことで言うとやっぱりウリマル。今後も基本はウリマルだ。北でも南でも、世界で通じるそんなウリマルを伝えていかなくてはならない。

 次に社会的な存在としての人間を育てること。最近、日本社会では、人との距離の取り方、社会での自分の位置を確認できない若者が多い。そうしたバランス感覚、コミュニケーション能力を育むのがウリハッキョの特色であるはずだ。そのような人間性重視の教育をもっと志向していくべきだろう。今後も努力したい。

いつも子供たちと一緒に

沈龍漢(51、福島初中教育会副会長)

 今年、創立30周年を迎えた福島初中だが、ハッキョができた時からスクールバスの運転手を務めてきた。それだけに、先日の30周年記念行事は感慨深かった。

 毎日の登下校はもちろん、小さい学校なので、修学旅行や生徒たちの各種スポーツ大会や芸術コンテスト参加など、つねにスクールバスで出かける。だから私は、いつも子どもたちと一緒に過ごしてきた。修学旅行などの行事まですべて見守ってきた。そんな毎日を30年間、子どもたちから若さをもらって今も元気だ。

 創立当初、保護者はみんな1世だった。今はその子どもの子どもが通っている。みんな私の孫のようなものだ。振り返ってみて何が楽しかったって、子どもたちと一緒にいる時がやはり一番楽しい。

 民族教育は今も昔も、そしてこれからも在日朝鮮人運動の中心だ。先日の30周年行事に集まった卒業生たちを見ながら、改めて痛切に感じた。彼らが福島の同胞社会を支えている。民族教育がなかったら、彼らがいなかったらどうなっていただろうか。やはりこうして次代を育てていかないといけない。

「骨太の民族心」を

黄鶴子(65、広島初中高寄宿舎炊事員)

 民族教育を受けるため、中四国地方から集まってくる生徒たちに28年間、食事を作ってきた。当時、職員を探しているという話を聞き、山口・徳山から家族で引っ越してきたのだ。

 実の親ではないが、親に代わる存在として、言葉の使い方や礼儀をしつけるため生徒たちをよく叱った。

 しんどい仕事だが、夕食を作り終えて寄宿舎を出る時に「オモニ、夜道に気をつけて」と心配してくれたり、卒業後に「オモニが怒ってくれたことが身についている」と言ってもらった時にささやかな喜びを感じた。こういう一言で生徒の成長を実感できるからだ。

 人間が生きていくうえで大事なのは「心」。目上の人にあいさつをしたり、人を思いやる心を育てることが教育の基本だし、今の民族教育で一番弱い部分だと思う。寄宿舎を抱えるわが校は、家族と離れて暮らす生徒たちの親代わりになれるよう、日々の生活の中で「骨太の民族心」育てていかねばと思う。とくに若いオモニたちには学校を支える主人公としてどんどん活躍してほしい。

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