春・夏・秋・冬

 英国の作家、フリーマントルは95年の著書「ユーロマフィア」で、93年11月のEU(欧州連合)域内の国境規制撤廃と同時に、一気に急増し始めた犯罪の検証を試みている。とはいっても、窃盗や殺人といったたぐいのものではない。まさに国境を越えた各国マフィア連合による犯罪だ

▼彼によると「あらゆる多国籍企業にさきがけて、犯罪組織はその形成段階からEUがもたらすであろうばく大な利益の可能性を計算しきっていた」という。「コロンビア、ボリビア、ペルーの麻薬マフィアたちはフランスやイタリアのマフィアと合弁事業を結成し、さらにロシア、ポーランドのマフィアとも手を結んだ」。そのネットワークは地球規模に拡大。世界連邦の様相を呈し、EU域内だけで毎年、少なくとも90億ドル以上が彼らの懐に流れ込んでいる

▼麻薬に加え、人身売買、臓器売買、売春という原始的なものから、自動小銃からミサイルに至る武器売買、偽造紙幣、さらにはなんと核物質まで、ありとあらゆるものに手がつけられている。武器の供給先は旧社会主義圏で、それを政界と強力なコネクションを持つ米国人実業家が仲介していると指摘する

▼また、米国の裏社会を仕切るイタリアマフィアについて、撲滅の絶好の機会だった第2次世界大戦中、シチリア島奪還に当たって米軍上陸地点の確保、ドイツ軍の動静掌握に彼らを利用、取り引きしたことがこんにちの「繁栄」の遠因になったとも

▼そういえば、渦中の人物ビンラディン育ての親も米国だった。こうした例は枚挙にいとまがない。(彦)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事