ウリ民族の姓氏−その由来と現在(17)

慶州金氏の始祖、金閼智

種類と由来(4)

朴春日


 では、各姓氏の興味深い由来をたどってみることにしよう。姓氏の順序は、最も人口数の多い「5大姓」から始めて、それ以後は著姓・稀姓・僻姓・複姓の中から適宜に選んでいく予定である。

 まず、わが民族最大の人口数を持つ金氏を見てみよう。

 参考になるのは、1975年度の南朝鮮における人口調査の結果で、金氏は全体の21.9%を占めているが、これは解放前の1930年度全国調査の結果と、ほぼ同じ割合となっている。

 このようなすう勢は、それ以後もあまり変わっていないので、わが民族の中で金氏の占める割合は、南北合わせて2割強と推定しても、さして誤らないであろう。

 ところで、その金氏の中で最も多いのは、いうまでもなく金海(キムヘ)金氏と慶州(キョンジュ)金氏の2氏族である。

 ちなみに、1985年の南朝鮮における人口調査では、金海金氏が376万7000人で全人口の9.3%を占め、慶州金氏は152万3000人で全人口の3.8%となっている。在日同胞の場合も、たぶん同じような比率ではないだろうか。

 さて話の順序として、まず慶州金氏の始祖伝承から始めよう。「三国史記」「三国遺事」などにはこうある。

 その昔、新羅の都の西にある林の中から、真夜中に鶏の鳴き声が聞こえてくるので、人びとはみな、不思議なこともあるものだとうわさした。

 そこで宮廷が、瓠公(ホゴン)という男に調査を命じると、彼は夜中にその林へ近づき、白い鶏がのどをふるわせて鳴いているのを目撃した。しかも後ろの木の枝には、黄金色に輝く小さな箱がかかっていた。驚いた瓠公が宮廷へもどって報告すると、国王は「直ちに、その箱を運べ!」と命じた。

 やがて、その箱は王宮へ運ばれ、国王や貴族らの見守る中で開けられた。その瞬間、みんなは驚きの声を上げた。なんと、黄金色の箱の中から、りりしくも愛らしい童子が現れたのである。

 国王は大いに喜び、「これは天が授けたわが息子だ!」といって、その童子を養子とした。そして童子の姓氏を黄金色の箱にちなんで「金」とし、抜きん出て聡明なことから「閼智(アルチ)」と名付けたのである。

 この金閼智が慶州金氏の始祖であり、その子孫から新羅国王も生まれた。そして、その後裔(えい)がいくつかに分かれたが、たとえば、光州金氏の始祖は、新羅第49代・憲康王の3男・金興光であり、安東金氏の始祖も第56代・敬順王の後孫・金日兢である。

 また江陵(カンルン)金氏の始祖・金周元も、金春秋の5世孫である金惟靖が始めたものであり、延安(ヨンアン)金氏の始祖も新羅の王子であったと伝えられる。

 次回は金海金氏である。(パク・チュンイル、歴史評論家)

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