ゆがんだ風景−「記憶の戦争」の現場で(6)

日本軍の重慶爆撃が最初

空爆は皆殺しの思想/朝鮮戦争で米軍が使用した炭疽菌


 米軍によるアフガニスタン攻撃で、ハイテク兵器を投入した作戦によって、空爆による民間の死傷者が急増している。空爆反対の声も高まってきた。

 しかし、日本政府は米軍の軍事行動を無条件に支援し、海外に自衛隊を派兵するテロ特措法を成立させた。これは、100年以上前、日本が朝鮮・アジア侵略を開始し、その民族的自主権を徹底的にじゅうりんした歴史を想起させるもので、アジア諸国の怒りをかっている。

 作家の辺見庸さんは、米英によるアフガン攻撃を「天人ともに許しがたい大虐殺以外の何ものでもない」(東京新聞10月17日付)と厳しく批判しながら、「この人倫の根源は、攻撃当事国だけでなく、攻撃を支持する日本をふくむ多数の国家により踏みにじられ、無視されている。つまり、アフガンにすでにある耐えがたい悲劇が、爆撃により、さらに地獄に追いやられるのを、事実上、国際社会があえて承認していることだ」と憤激する。

 新法を踏み台に、自衛隊が地球規模で米軍を支援する態勢づくりが加速する日本。ほとんどのメディアは米国の軍事行動を「やむをえない」(朝日新聞10月2日付社説)などと追認している。この風潮について、軍事評論家で東京国際大学教授の前田哲男教授は10月28日、東京都内で開かれたピースボート主催の講演会で強い警鐘を鳴らした。

 前田教授はまず米軍のアフガン「空爆」こそは、「皆殺しの思想」にもとづくものだと断罪した。歴史上初めて空爆戦を導入したのは、第2次世界大戦末期1937年から39年にかけて、日本海軍航空隊が行った重慶無差別爆撃であると指摘し、「20世紀に初めて日本が空爆という戦法を開発し、そのおびただしい最初の犠牲者は中国民衆であった」と述べた。

 さらに、米国内で広がる炭疽(たんそ)菌被害にも触れて、「第2次世界大戦中に、最初に生物(細菌)兵器を開発・使用したのも日本であり、戦後、日本はその罪状免責と引き換えに米国に研究データを渡した」と指摘。「その後米軍は朝鮮戦争で炭疽菌を使って、朝鮮・中国民衆を無差別攻撃した」ことを明らかにした。この事実は52年9月、世界の権威ある科学者が加わって北京で開かれた国際科学委員会の「細菌戦調査報告」ですでに公表されている。

 前田教授は9.11以降の米軍による報復戦争を「全く新しい戦争」と呼ぶ政治家やメディアの動きを一蹴し、「戦争とは人間の体に鉄の塊を撃ち込んで殺すものであり、戦争の本質は何ら変わらない」と断じた。

 日本軍の細菌戦を担った悪名高い731部隊から米軍を経て、世界中に拡散されていった生物兵器の歴史。さらに空爆という皆殺しの思想を人類史上最初に重慶で実践した狂気。前田教授は戦後の日本が隠ぺいした過去の記憶が、新たな戦争の機運と共に蘇ってきたと述べ、「国民の戦後史認識の欠如とゆがみによって、戦争のできる国家体制作りが容認され、民族排外主義的な妄言や暴力が横行する極めて危険な事態を生み出している」と語った。

 第2次世界大戦後、日本は朝鮮戦争の対米協力を通して米国の世界戦略に固く結びつき、米国との同盟を国家の土台にした。冷戦イデオロギーにどっぷり浸り、朝鮮民主主義人民共和国を敵視し続けている。新ガイドライン安保体制は沖縄を犠牲にして在日米軍基地を強化し、朝鮮戦争の再開すら準備している。これは朝鮮の統一・アジアの平和へと向かう歴史の流れに逆行するものだ。

 すでに、2年前の新ガイドラインの立法化の過程について朝鮮は「論議された全過程は、徹底して共和国を主な攻撃目標に定めていることを明白に実証する」(外交部代弁人談話)と強く警告した。その最大の狙いは「日本周辺有事」=朝鮮半島「有事」(労働新聞論評)の認識の下に、朝鮮に対する再侵略の野望を成し遂げようとすることにあるのだ。

 「テロ防止・根絶」を口実に自衛隊の海外派兵に道を開いた今回のテロ特措法は、米軍の判断で自動的に自衛隊が参戦する仕組みとなっている。

 その一方で制定を目論んでいるのが有事立法であり、国家総動員体制の構築である。今夏、発覚した在日同胞への公安調査庁の外登原票違法入手事件は、在日朝鮮人を「異質な存在」として排除、統制して、平和・民主勢力の抑圧と徴兵、徴用、言論統制への突破口を開こうとする狙いを露骨に表している。日本はまさに戦争回帰に大きく舵を切った。(終わり・朴日粉記者)

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