「自主権こそ平和の要」、「米国の圧力に屈しない」

朝鮮の反テロ、対米政策
一貫した主張を展開


 朝鮮外務省は3日、テロ根絶に向けた努力の一環として国際文書である「テロ資金供与防止に関する条約」と「人質行為防止条約」に朝鮮が署名、同意することを明らかにした。米国の同時多発テロ事件以後、国際情勢の変化に対応する朝鮮外交の一端を見ることができよう。米国の対アフガニスタン戦争に関する朝鮮の立場は、次のように要約することができる。すなわち「あらゆる形態のテロと、それに対するいかなる支援にも反対」(外務省スポークスマン)するが、武力を行使する米国の報復戦略には追随しない。米国の強硬路線が朝鮮半島にもたらすかもしれない不測の事態を警戒する一方、対話を通じた朝米関係改善を促す。

武力行使に反対

 テロ事件直後、朝鮮は外務省スポークスマンが記者会見に応じる形で「テロ反対」の立場を内外に表明したが、その内容は外交チャンネルを通じて米国側にも公式に伝えられていた。

 昨年、敵対関係の終息を確約した朝米共同コミュニケが採択される直前、両国はテロに反対する共同声明を発表している。朝鮮はテロ事件に際して、共同声明に込められた原則的立場に変化がないとのメッセージを送ったのだが、それは現在の報復作戦に対する全面支持とイコールではない。テロ事件の後、国連総会で演説した朝鮮代表は「テロ問題は国連と国際法に基づいて解決されなければならない」と訴えていた。米国が空爆を開始した翌日には、外務省スポークスマンが「武力行使や戦争の方法はどのような場合であっても正当化されない」とのコメントを発表した。

 空爆直後、西側諸国や米国の同盟国は支持声明と支援約束を相次いで発表したが、空爆が長期化しアフガニスタンにおける民間人被害が拡大するにつれ反戦、反米の国際世論は徐々に高まりつつある。

 9月末、国連の安全保障理事会で採択された決議はテロ資金供与防止に関する国際的協力の必要性を強調していた。今回の反テロ条約署名に見られるように、9月11日の事件以後、朝鮮は米国の報復路線とは一線を画しながら、国際社会の反テロ行動に積極的に参加する姿勢を示してきた。

米の「力の論理」

 一方、米国はテロ事件の原因と自らの一方的な外交路線を顧みることなく、国際社会に向かって「米国の側につくか、テロリストの側につくか」(ブッシュ大統領)と2者択一を迫った。米国の「力の政策」は朝鮮半島にも新たな緊張をもたらした。

 米国はアフガニスタンに対する空爆を続ける一方、朝鮮半島における「戦力空白」を口実に南朝鮮の米軍戦力を強化した。ブッシュ大統領は、読売新聞など外国メディアとの共同会見(11月17日)で朝米対話が実現しない原因が朝鮮側にあるとの認識を示し、面識のない朝鮮の最高指導部に対して「疑い深く、秘密主義である」と発言するなど、外交慣例では考えられない言動を繰り返した。

 朝米対話は、米国が固持する朝鮮敵対視政策によって中断を余儀なくされた。ブッシュ政権は、クリントン政権時代の朝米合意をすべて覆した。朝鮮を「ならずもの国家」と呼ぶ姿勢を変えることなく、共同で反テロ声明を発表した相手国を引き続き「テロ支援国」のリストに並べている。

 米国は去る6月、朝鮮との対話再開と関連していわゆる「核、ミサイル、通常兵器」の3つの議題を新たに提起したが、朝鮮側が受け入れることのできない内容であった。朝鮮戦争の停戦条約によって朝鮮と米国は法的には交戦関係にある。米国の通常兵器削減要求は朝鮮側に「力に屈して武装解除せよ」と威嚇するに等しい。

 そして米国は報復戦争の機に乗じて、不当な要求を合理化しようとした。ブッシュ大統領は外国メディアとの会見でテロ根絶のための国際協力が進む中、朝鮮が「平和を望むというメッセージ」を送ろうとするならば、軍事境界線に配置した「通常戦力を後退させればよい」と語った。

対話再開の原則

 朝鮮外務省スポークスマンは、ブッシュ大統領の会見内容が「無知と破廉恥の極致」だとして強く反発したが、同時に朝米対話再開はブッシュ政権が、前政権の採択した政策の水準に立ち返ってこそ可能であるとの原則的立場を表明した。米国の強硬路線とは対照的な対応だといえよう。

 テロ事件以後、米国は世界を「善と悪」、「文明と野蛮」に2分化し自らの報復作戦を正当化した。これを黙認もしくは追随することで自国の利益を追求しようとする国もあったが、朝鮮は一貫した外交路線を展開している。

 最近の労働新聞(3日付)は次のように指摘している。「支配主義者は国際関係の規範や原則を無視して小国を見下し、不当な要求を突き付け、それが実現しないと武力を動員し強権を行使する」、「自主権は国と民族にとって生命に等しく、これこそ平和保障の要である」。

 現在のアフガニスタン情勢を念頭に置いたものであろうが、その主張は朝鮮の対米政策を貫く揺るぎない姿勢でもある。(金志永記者)

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