それぞれの四季

「旗の波」

姜龍玉


 移り気な秋の空が真青な快晴を提供してくれた母校の運動会の日、軽快な吹奏楽を皮切りにトラックを行進する高校生たちの顔は、やさしい陽射しを浴びて眩しく輝いていた。

 寄宿生の多い母校は運動会となると、中・四国地方から早朝車を飛ばして、やってくる同胞たちでにぎわい、久し振りにわが子に会い、成長を実感する親たちにとって格別楽しい1日となる。

 ウリハッキョの運動会のメインは何といっても全生徒参加のマスゲーム。赤と青の旗を両手に持って、胸の前で弧を描くように大きく振りながら、縦横列をぴったり揃えて行進する光景は壮観である。

 私が学生の頃も、運動会に向けて放課後は毎日この練習だった。とりわけ「旗の波」の練習はよく覚えている。

 何枚かの細長い幅の布を整列した生徒たちが掲げて頭上で繋げ広げるようにして張ると運動場には、巨大な共和国旗が浮かぶように現れ、その下で屈んだり立ったりして波を演出するのである。旗の下は人いきれと砂塵で蒸すような暑さ。きれいに旗が波打つまで何度も繰り返し練習すれば、全身は汗ばみ、上げっぱなしの腕はしびれたものだ。しかし、やがて皆で力をあわせて完成させる喜びを味わうようになり、本番当日、やり終えた後は静かな感動で胸がほてった。

 そんな懐かしい空間の只中にいる高校生たちが懸命につくる「旗の波」を、私は校舎の高いところから眺めながら、この場所で風を含んで力強くはためく統一旗を俯瞰(ふかん)する日はいつのことだろうか。ふと、そんな思いが込み上げてきた。(主婦)

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