取材ノート
「善・悪論理」の排除
月に1度を目安に朝鮮問題担当記者、研究者たちと親睦会のようなものを作ってもう4、5年になる。月末には必ず集い意見交換をしてきたが、9月11日のニューヨークでの事件以降、休会となっていた。
先日、ようやくみんなの日程が調節できて2ヵ月ぶりに顔を合わせた。しかしいずれの表情も疲労困ぱい。その度合いがもっともひどかったのがデスク昇進直後、9月11日の事件が起き、紙面作りに当たった記者だった。「この間、休みは1日もなく会社に泊まりっぱなしだった」という。 現地報道とワシントンの反応の整理。また今回は特派員以外に、フリージャーナリストたちとも別途契約し、各種情報の確認などに当たったから、仕事の量は通常の倍ではきかなかったらしい。 「それ以上に神経を使ったのが北部同盟=善、タリバン政権=悪という単純な図式を描かないようにすることだった」という。 「タリバンはビンラディンをかくまったが、貿易センター襲撃犯ではない。ブッシュの『新しい戦争』定義によって、同一視されてしまったが、そのことによって政権の成立過程などすべてを否定してしまうと、同じ論法を使ってどの政権も否定することがいともたやすくなってしまう。例えば『ならず者国家』。だから頭を悩ました」 冷戦崩壊後、米国がその軍事力維持、拡大を正当化するための口実として作り出した「ならず者国家」。朝鮮やリビア、イランなど、米国による世界の単独支配に反対し、国連憲章にも明記されている国際社会における平等、互恵の徹底した実現を求める国々をリストアップした。ブッシュ政権のライス安全保障担当特別補佐官は「米国に挑戦する邪悪な国家」とまで表現している。 米国は善であり、その言葉に耳を貸さぬ者たちは悪という、「神をも恐れぬ論理」。新世紀、人類の知性が問われている。(彦) |