第30回在日朝鮮学生美術展
楽しい子どもの世界と鋭い問題意識
今年の第30回在日朝鮮学生美術展の応募総作品数は8844点、そのうち入選作品は3279点(昨年は1629点)、入賞作品は334点。すでに「全国」を巡回している美術展に寄せられる称賛の声からみても、朝鮮学校の生徒たちの作品の質の高さをうかがえる。一部の特定校だけではなく、各校の水準がむらなく高まっている。
まず、全般的に生徒たちが年齢に合った生活空間でのテーマを無理なく探し、多用な技法と材料を使ってそれをたくみに表現している。とくに最近では工芸部門での上達が顕著で、子供の発想の豊かさが最大限生かされている。同じ材料を使っても、年齢によって全く違った追求と使用法をするのが面白味でもある。 初級部の絵画作品を見ると従来のクレヨン画、水彩画、ペン画などの画法にとらわれず、スクラッチ、スタッピング、コラーズなど多様な技法と、また、それらを混ぜ合わせた技法を自由に使い、個性的な作品が生まれた。テーマ別に見ると、初1、2年では学校に通う喜びがよく表れており、生徒たち自身の内面的な感動がストレートに現れていて、力強く快活で、見る者を微笑ましくさせる。 中級部では、授業を通して制作された作品に質の高いものが多かった。高級部の作品では、自身の内面世界を物質化しようとする、画家本来の制作プロセスを踏まえた優秀なものが多かった。とくに高2が質、量的に優れていた。 21世紀の国際化時代に合わせて、今後、美術教育でも、生徒たちが自分を直視し、民族性をベースに豊かな感性と深い思索に根ざし、広い視野を持った人材を育てていきたいものだ。
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