青商会「ウリ民族フォーラム2001in広島」

21世紀 豊かな同胞社会を

分科別討論会から


 18日に広島国際会議場で行われた「ウリ民族フォーラム2001inヒロシマ」(21日付け本紙に既報)では、広島県青商会をはじめ県内の同胞たちによるシンポジウムや文化公演などが行われ、21世紀の同胞社会のビジョンとその実現についてさまざまな問題が提起された。第1部の分科別討論会では、そのテーマに沿って「民族教育」「スポーツ」「経営」「朝鮮料理」「朝・日関係」の5分野で白熱した討議が繰り広げられた。各分野ごとの内容とともに、青商会第6次総会(17日、広島国際ホテル)で4代目会長に選出された黄元圭氏(40、愛知県青商会会長)の抱負を紹介する。(李明花記者)

民族教育

変るもの守るもの/民族心育む場と機会大切に

 民族教育分科「21世紀に変わるもの、守るもの」では、日本の高校教員から見た民族教育の優れた点、その重要さに関する指摘がなされた後、「国際化と教育」の観点から今後の民族教育の課題について論議が交わされた。

 まず、朝鮮問題や日本学校に通う在日コリアン生徒の進路問題に取り組んできた広島県立戸手高校の児玉戒三教諭が、教え子たちがサマースクール参加を通して民族性を取り戻していく姿について言及した。

 「当初は無関心だった生徒たちも、在日の歴史や自分のルーツを知る過程で、民族に目覚めるケースが多い。これからは彼らと私たち日本人との違いを認め合いながらともに歩んでいける社会を作っていく必要がある」と語った。

 広島、神戸の両朝高、朝鮮大学校などで26年間教べんを取ってきた女性同盟中央の梁玉出副委員長は、「子どもたちの間で朝鮮人としての高い自覚と民族心を育むには、やはり民族教育が必要だ」と語った。また民族教育の今後の課題について、「朝鮮学校を引き続き守っていくためには民族教育の権利を拡大していくことが不可欠であり、そのための運動は同胞だけではなく、日本の人々とも連帯して幅広く展開していくべきだ。また教育レベルを限りなく高めるため、全般的なレベルアップが求められる」と語った。

スポーツ

在日はなぜ強いのか/源は朝鮮人としての誇り

 スポーツ分科「在日はなぜ強いのか」では、スポーツジャーナリストの康煕奉氏の司会で、WBC世界スーパーフライ級チャンピオンの洪昌守選手、在日本朝鮮人蹴球協会の金鍾成技術部長、サンフレッチェ広島の李漢宰選手が発言した。

 金部長は、1989年から92年にかけて祖国の国家選手として活躍したことについて、「意を決して頑張れば、在日でも国家選手になれると分かった。同時に、東京朝高時代は日本の公式戦には出れず、日本の選手とは練習試合でしかたたかえなかったが、国家選手として日本とも対戦でき、とてもうれしかった」と語った。

 また、朝高サッカー部が日本の公式戦に出場し、インターハイや選手権など全国大会に出場している現状については、「とても素晴らしいことだ」と述べながら、彼らが今後さまざまな国際舞台で活躍することに期待を寄せた。

 これに対し、広島朝高卒業後の昨年3月にサンフレッチェ広島に入団した李選手は、「朝鮮人としての誇りを持ってプレーしている」と強調した。

 洪選手は3回目の防衛を果たしたことについて、「相手は背は低かったがリーチが長く、手ごわかった。しかし試合中、東京朝高の校歌が聞こえてきて、とても勇気づけられた。母校の後輩らの前では負けられないと思い必死に頑張った」と言いながら、「世界王座をキープするのはとても難しいが、応援してくれる同胞の期待に答えられるように、できるところまでがんばりたい」と抱負についても語った。

 そして、洪選手の「パワーの源は」との康氏の質問に、「ニンニクが入った朝鮮料理かな」と笑顔で答えた。

朝鮮料理

「狂牛病」吹き飛ばす新メニュー/朝鮮料理のバージョンアップ

 朝鮮料理分科「『狂牛病』を吹き飛ばす朝鮮料理のとっておきメニュー」では、奇抜な新メニュー開発で繁盛店を経営する若手経営者2人が、朝鮮料理にかける思いとBSE(狂牛病)問題を乗り越えるためのメニュー、繁盛店経営のノウハウについて語った。

 大阪で、朝鮮料理の基本を生かしながら消費者ニーズに対応した個性的な創作料理を手がける「まだん」(本店=東大阪市)の趙成徹オーナーは、BSE騒動で、多くの同胞焼肉店経営者が苦境を強いられているなか、「こういう時こそ1世から受け継いだ朝鮮料理のバージョンアップが必要だ」と指摘。経営のノウハウについては、「増店を目指す経営者は『3K(経営、管理、教育)』をすべて任せられる店長育成に力を入れなければいけない」と述べながら、人気メニューの「カルパッチョ」「フェの3種盛り」などを紹介した。

 焼肉「正泰苑」(本店=荒川区)を営む金日秀さんは、焼肉店経営を通じて朝鮮の食文化を広く知ってもらおうと、独創的なメニュー作りに励んでいる。

 金さんは「なんでも作ってみるチャレンジ精神が大切」と強調しながら、「あんかけキノコのピビンバ」などオリジナルサイドメニューを紹介。焼肉をメインにしながらバランスよくサイドメニューを展開することで、「1品を目当てにお客さんが来てくれるよう、こまめに新メニューを開発し、お客さんを飽きさせない工夫をしている」と述べた。

朝・日関係

近くて近い国へ/正しい歴史認識から始まる

 朝・日関係分科「『近くて遠い国』から『近くて近い国へ』」では「朝・日関係改善における根本問題とは何か」について、被爆者問題に焦点をあてながら意見交換した。

 まずは、在日本朝鮮人被爆者連絡協議会会長で、広島修道大学の非常勤講師を務める李実根氏が発言。

 「日本の敗戦と同時に切り捨てられた在外被爆者は、今なお日本政府から放置されたままだ。その背景には、明治時代から培われた朝鮮民族に対するべっ視が日本国民のなかにあったからだ」と指摘。

 本当の意味での謝罪、形ある償いがあってこそ、朝・日両国が真の「近くて近い国」になれると語った。

 昨年4月に再開した朝・日国交正常化交渉の諮問委員を務める総聯中央国際局の金明守副局長は、その展望について「日本の『朝鮮観』のあり方自体に問題がある」と述べながら、「人間と人間が向き合い、互いを尊重する信頼関係の上に立っての交渉が不可欠であり、そのためには過去に対する謝罪と補償がなされることが大前提」と指摘。「両国の若い世代が正しい歴史認識を共有していくことから新しい朝・日関係の第1歩が始まる」とし、「今後、在日朝鮮人の法的地位が確立されれば、在日同胞が東南アジア経済圏のステージに立てる未来がやってくるだろう」と述べた。

経営

在日企業家の原点/「無」から「有」想像 1世のバイタリティー

 経営分科「逆境を乗り越えろ!  1世から学ぶ在日企業家の原点」では、来年3月の設立を目指す新しい民族金融機関「ハナ信用組合(仮称)」の発起人代表、朴忠佑氏が登場。「無」から「有」を創造した1世のバイタリティーと相互扶助精神に触れながら、21世紀を生きる同胞商工人の役割と心構えについて語った。

 朴さんは朝鮮大学校政治経済学部卒業後、15年間の専従活動を経て、1988年から親族の会社を継ぎ、経営者としての道を歩んできた。その過程で、1世のアボジからバイタリティーと相互扶助精神、朝鮮人としての誇りを学んだ。

 必死で考え、働き、効率的に事を進めた結果、会社を軌道に乗せることに成功したと述べながら、「1世がそのチャンスをつかむことができたのは、朝鮮人としての尊厳を守るために常にアンテナを立て、死に物狂いで考え、生きてきたからだ」と語った。

 今後の商工人の役割については、互いに切磋琢磨しながらスクラムを組むことが大事だとしながら、そのためには「民族心と朝鮮人としての誇りをしっかりと持たなければ。その上で努力、熟慮、経験を重ね、強さと優しさを兼ね備えていくことが必要だ」と強調した。

黄元圭・新会長に聞く

「共同体」から「機能体」へ/ネットワーク、国際的広がりを

 青商会第6次総会(17日、広島国際ホテル)で4代目会長に選出された黄元圭氏(40、愛知県青商会会長)に今後の抱負について聞いた。

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 「豊かな同胞社会のために」「子どもたちの未来のために」というスローガンのもと、1995年9月に青商会が誕生してから6年間、30代の若い同胞を中心に活動を続けてきた。とくに第5期は「民族ネット」と「経済(情報)ネット」の構築を軸に活動を展開してきた。

 第6期はその成果にもとづき、2つの基盤を構築していきたい。

 1つ目は汎民族的な連合機構の常設。まずは来年大阪で開かれる民族フォーラムを青商会のみならず、南朝鮮、米国、中国、ロシアなど世界中の同胞青年が集う国際的な祝祭にしたい。

 6.15共同宣言の履行に向けて、統一列車の運転手となる意気込みで取り組んでいく予定だ。

 2つ目は、飲料水会社とタイアップしている「未来企画」(東京、西東京)をはじめとした共同購買メリットの経験を生かし、異業種、同業種、生活協同組合を網羅した協同組合連合組織、「『1世』協同組合連合会(仮称)」を結成することだ。「1世」という名前にしたのは、@1世同胞の「1」A1つになる世界の「1」B統一1世代の「1」C日本人口のなかで在日同胞が占める人口の1%の「1」という意味を込めたかったからだ。

 青商会の活動はこれまで部分的、単発的、地域特定的なものだったが、これからは「共同体」という体制から真の「機能体」として生まれ変わらなくてはならない。

 そのためにすべての青商会に民族文化、経営企画、財政の各分野で委員会を設置し、より有益な情報を与えることができる会員間のネットワークを強めていきたい。

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