それぞれの四季
本の世界へ誘う
金春正
最近、「活字ばなれ」が大きな社会問題になっているが、電車に乗ると必ずといっていいほど新聞を読んでいる人、文庫本をハンドバックから出す人、途中から読んで途中で立ち上がり器用に降りて行く人など日常的に本を読んでいる人は、かなり多い。こと、子どもたちに限っては本を読まなくなっているのが現実だと思う。
教科書やコミックス、雑誌などを除いて1カ月の平均読書量が小学生6−1冊、中学生2−1冊、高校生が1−3冊というのでは、物があふれたこの豊かな時代に何と貧しい読書体験しか積んでいないのではと思う。 子どもたちが1冊の本に出会い、読書の喜びを知るようにと学校や図書館などで本の読み聞かせが盛んに行われている。子どもの成長の中で読み聞かせはとても大切。登場人物の姿や顔かたち、風景などすべてを豊かに想像する過程を通じて、やがて、自分の読める本を選び、読みたい本を自分の力で読むようになるからである。耳の底に残されている声の記憶が、聞かせてくれた人、つまりオモニやハルモニに対する強烈な記憶になっていつまでも耳の中に残る。 私が小さい頃オモニからくり返し聞かされた済州島の生活や風景があたかもその地で生まれ、生活したかのように思い出されるのはきっとそのせいだろうか。 子どもたちに本を読んでもらいたいと一方的に期待するだけではなく、まず大人たち自身が読書の「楽しさ」を思い起こし、朝鮮に古くから伝わる民話やお話で子どもたちを本の世界へいざなって行けたらいいなあと思う。(生涯学習振興公社非常勤職員) |