現場から−黄琴鮮(神戸朝高教員・26)

大きな力持つ朝鮮舞踊

県内各校が協力、 生徒に「魂」を


 今から4年前、朝鮮大学校を卒業した私は母校である神戸朝鮮高級学校に英語教師として赴任し、朝鮮舞踊部の指導も任されることになりました。初、中、高、大と16年間、朝鮮舞踊部にはいましたが、指導のための専門的な知識のない私に果たしてできるのだろうかと不安な気持ちでした。

 その不安は現実となり、1〜2学期の間は生徒との衝突が絶えませんでしたが、私にできる唯一のことはとにかく一生懸命に指導をして生徒の信頼を勝ち取ることでした。毎日のように部活に出て、彼女たちと同じ時間、空間を共有しようと努力しました。技術だけなら私よりももっと上手に教えられる人がごまんといます。でも教員として部活を任された以上、朝鮮舞踊を通して子どもたちの民族性、人間性を育てることを目標にがんばりました。

 そんなう余曲折を経て迎えた同年秋の在日朝鮮学生芸術コンクール。なんと、わが校舞踊部の創作群舞「魂」が金賞に輝き、優秀作品発表会に出演することになりました。決して水準が高いとは言えないかもしれませんが、生徒たちと一緒に作り上げたまさに「魂」のこもった作品で、朝鮮舞踊を踊る人間が忘れてはならない民族の魂を持つよう教えてきたことが認められた瞬間のようにも思えました。結果も大事ですが、どれだけ多くの人々に感動や力を与えることができるのかがもっと大事だということを生徒たちが身をもって体験できたことは、私の力にもなりました。

 朝鮮舞踊は大きな力を持っています。その翌年、わが校の舞踊発表会でこの作品を見た日本の観客からは、「これからは朝高の生徒、朝鮮の方ともっと仲よくしたい」「子どもたちの一生懸命な姿を見て涙が出た」などの感想をいただきました。プロのように上手に踊ることはできなくても、多くの人々の気持ちを動かせるのだということに喜びと驚きを感じました。

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 こうした経験を通じ、朝鮮舞踊は一介の部活動以上の大きな力を発揮できるはず、私たち教員にできることがあるはずだという気持ちが強くなり、県内各校の舞踊指導教員に声をかけ始めました。コンクールでいい成績を残すことだけがクローズアップされている今の環境を変えよう、兵庫の宝である小さな踊り手たちを初・中・高の一貫したシステムの中で責任を持って育てていこう、と。そして、賛同してくれた多くの先生方と「兵庫舞踊教研委員会」を発足させたのが2年前、1999年6月のことです。

 月1回、担当教員が集まって技能講習を開いており、学期ごとに初級部の地区別合同練習と県内中級部合同練習、中高合同練習を行っています。そして、年間活動のまとめとして、昨年から「兵庫朝鮮学校合同舞踊発表会」を開いています。委員会の活動も今年で3年目。昨年は学校の体育館を借りた合同発表会も、今年は多くの方々の支援によって立派なホールで開くことができました。初〜高級部生172人が出演し、保護者ら約400人がつめかけました。

 生徒たちは1年間の成果を思う存分に発揮していました。合同作品を準備する過程で自分の学校、よその学校という意識が無くなり、舞台で踊るすべての子どもを自分の生徒のように温かく見守る指導教員たちの顔には、喜びと誇りが満ちあふれていました。私もまた、舞台で生き生きと踊る生徒たちの姿に胸が熱くなり、励まされました。

 委員会の活動はまだ小さなものですが、これからも子どもたちと共に学び育っていく、そんな活動にしていきたいと思っています。

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