グローバル新風
パワーシフト
中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は今回、FTA(自由貿易協定)の締結を目指すことで合意した。FTAと言っても、一般の人にはあまりなじみのない用語だと思うが、簡単に言えば貿易や投資といったモノやカネの行き来を、複数国間で自由にしようという契約のこと。 すでにほかの地域では、欧州のEUや北米のNAFTA、南米のメルコスルなどの多国間地域FTA網(地域経済圏)が存在するが、合わせて17億の人口を抱える中国・ASEANのFTAが締結されれば、それは世界的にも巨大市場の誕生を意味する。 少し前までASEANは、急成長する中国を「競争相手」として警戒していた。しかし今回の合意にこぎつけたのは中国が懐の深さを見せたからだ。 FTAにともなう「痛み」を中国がASEANよりも多く引き受ける事によって、警戒感を解かせ、互いの関係を「競争相手」から「共存共栄」へと一機にパラダイム変換させた。 一連の流れに対し、東アジアの元祖経済大国である日本の動きはどうなのか。 実は日本も昨年から、アジアの国々と2国間のFTA交渉を重ねていた。しかしこちらはなかなか「太っ腹」になれず、話がまとまったのはシンガポールくらい。 ほかは、農業という「アキレス腱」が問題となり話が進まず、逆に国内では族議員が足を引っ張り、FTAどころか「セーフガード」の導入を呼びかける始末。某首相も国内の「痛み」でせいいっぱい、おまけにマスメディアの関心も今ひとつのようだ。かくして東アジアの軸は中華へと移るのか。(李達英=朝・日輸出入商社pulgasari@yahoo.co.jp) |