現場から−朴現徳(岡山県商工会商工部長・31)

大変な時こそ同胞の中へ

深刻な焼肉業者 協議会結成し対応


 岡山では今年の4月、県内の同胞焼肉業者の情報交換とレベルアップを目的とした「岡山焼肉協議会」が発足し、商工会も協議会の活動を積極的にバックアップしています。

 岡山には約100店舗の同胞焼肉業者があると言われていますが、今まではそれをまとめる団体がなく、横のつながりが弱い側面がありました。しかし近年、大手チェーン店の出店攻勢にさらされ、これにどう対応していくのかが同胞焼肉業者の大きな切迫した課題になってきたのです。

 協議会では何度となく会合を重ねていく過程で、目玉イベントとして10月に 「岡山焼肉まつり」を開催することになりました。

 商工会では協議会の役員とともに県内の焼肉店をくまなく訪問し、会員の募集とまつりの準備を進めました。

 訪問を通じて強く感じた事は、机の上で仕事をするのでなく、同胞を訪ねることがどんなに大事かということです。

 同胞の口から出るのは商売の話だけではありませんでした。子供の結婚問題、国籍の相談、また朝銀がどうなっているのかなど、生活全般にわたる心配事をとめどもなく話されます。

 商工会は税金問題だけではなく、同胞の生活と権利にかかわるすべての問題、つまり経営問題、各種許認可申請、登記実務、融資相談、冠婚葬祭などなど、同胞のためなら何の問題にでも対応しなければならないのです。同胞が求めている事をはっきりと知り、それに的をしぼって専門的に対応することが商工会イルクンの役割だという思いを新たにしました。

 焼肉まつりの当日は予想を超えた1000人以上の来場者でにぎわいました。まつりでは、朝鮮料理の食材や各種機材の展示コーナー、焼肉試食コーナーをはじめ健康講演会や民族舞踊の公演も行われました。

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 しかし、この頃から9月に発生した「狂牛病」騒動の深刻な影響が出始めていました。商工会では、県への要請、緊急融資への対応など、被害を最小限に食い止めるため奔走しました。とくに融資問題に力を入れ、今まで制度融資を利用したことのない同胞業者がスムーズにより多くの資金を調達できるよう、一緒に窓口に行き申請も手伝いました。

 一方、協議会ではこの状況をどうにか打破しようと「焼肉感謝デー」を企画しました。「焼肉感謝デー」企画とは、地域紙の朝刊に商品半額などの特典をつけた同胞焼肉店の名を連ねた全面広告を掲載し、集客をねらおうというものです。同胞業者のためになればと1軒1軒、焼肉店をまわり参加を呼びかけ、融資の相談や実情の聞き取りなど「顔の見える活動」を積極的に進めました。

 訪問の過程でこんな大変な時に一体、商工会が何をしてくれるのか、対応が遅いという批判も受けました。そこで、若い職員を中心に討論を重ね、大変な時こそ同胞と同じ気持ちで迅速に対応していこうと昼夜を問わず奮闘しました。

 その結果、「感謝デー」企画には多くの同胞業者が参加しました。広告が載った直後から問い合わせも続き、11月17、18日の 「感謝デー」当日は多くの店がにぎわったようでした。

 しかし、直後にBSE(牛海綿状悩症)に感染した2頭目の牛が発見され、その後に3頭目が発見されるなど、状況はますます厳しくなっています。

 商工会が同胞焼肉業者のために何ができるのかが、今こそ問われています。

 1世たちが血と汗と涙で築き、守り抜いてきた食文化を継承し発展させていくため、微力ながら精一杯がんばっていくつもりです。

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