日本軍性奴隷制裁く女性国際戦犯法廷

日本政府に法的責任

オランダ・ハーグで最終判決


 日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」(国際実行委員会主催)は4日、オランダ・ハーグで最終判決を発表した。判決は、日本軍性奴隷制は「人道に対する罪」「戦争犯罪」にあたるとして、昭和天皇を含む当時の軍司令官ら10人に有罪判決を下し、日本国家の法的責任も認定した。さらに判決は日本政府が国際法を違反したことを認め、「慰安婦」制度に関わった犯罪者の処罰、被害者に対する謝罪と補償、再発防止策を取るよう勧告した。(判決要旨は次号に掲載)

北南朝鮮の被害者

「これが正義」

裁判官から判決文を受け取る被害者の郭金女さん。 右は法廷の実行委員会代表を務めた南の尹貞玉氏(4日、 ハーグ)
世界の国際法の権威たちで構成された法廷(写真は「戦争と女性への暴力」日本ネットワークが提供)

 法廷には12の国と地域から被害者や検事を含めた約80人が参加した。北南朝鮮からも北の郭金女さん、南の金恩禮さんら被害者と関係者が参加した。法廷で被害女性たちに判決文が手渡された瞬間、女性たちは判決文を高々と振り上げ、「これが正義だ」と歓声を上げたという。

 最終判決は250ページからなり、@序文と審理の背景A事実認定B適用可能な法C個人の刑事責任D法的認定と判決E国家責任F賠償――の7部で構成されている。

 判決は、日本軍「慰安婦」制度が「性奴隷制」であり「人道に対する罪」と認定したうえで昭和天皇裕仁、東条英機(首相)ら10人の被告が「性奴隷制を奨励し、犯罪的な制度への関与を認識していた」として有罪とした。有罪が科されたのはほかに安藤利吉(第21軍司令官)、畑俊六(支那派遣軍総司令官)、板垣征四郎(支那派遣軍総参謀長)、小林性蹐三(台湾総督)、松井石根(上海派遣軍司令官)、寺内寿一(南方軍総司令官)、梅津美治郎(関東軍総司令官)山下泰文(第25軍司令官)らだ。

 また、日本政府の国家責任も認定した。「国際的違法行為である強かんと性奴隷制の罪、またそれに続く継続的な義務の不履行において、日本国家は国際法の下に責任がある」。

 さらに判決は日本政府に対して12項目を勧告。「慰安所」設置が国際法違反だと認め、犯罪者の特定と処罰、被害者に対する謝罪と補償、性奴隷犯罪に関する教育を実施することを求めた。旧連合国や国連メンバー国にも勧告を出した。

 女性国際戦犯法廷は日本軍性奴隷制の被害国であった北南朝鮮、中国、台湾、フィリピン、インドネシアと加害国日本の7団体による国際実行委員会が主催した民間法廷で、昨年12月、約1000人の参加のもと東京で開催された。

 同法廷は、日本軍性奴隷制が戦争犯罪であることを被害者の証言と具体的な証拠とともに改めて明らかにし、植民地支配の一切の法的責任を回避する日本政府の責任を厳しく追及し、被害者の尊厳を回復することを目的とした。国際実行委員会が定めた「法廷憲章」をもとに、各国の検事と首席検事が起訴状を作成し、世界的に著名な国際法や人権の専門家らで構成された裁判官が判決を下した。昨年の法廷では判決の概要だけが発表されていた。

尊厳回復の一助に

日本ネットワーク 東京で記者会見

 法廷の主催団体である「戦争と女性への暴力」日本ネットワークは10日、最終判決が発表されたことと関連し、東京・永田町の参議院議員会館で記者会見を開いた。

 松井やより代表は、被害者の勇気と正義への強い思いが世界で運動を喚起し、このたびの判決を生んだとその功績をたたえた。そして、判決で昭和天皇を含む個人の刑事責任が認定されたことが、「被害者の尊厳を回復する一助になった」とその意義を強調した。

 また、今後日本政府に判決を受け入れさせることが重要だと指摘。判決を国連メンバー国に配るなど、有効に活用することで日本政府の法的責任を徹底して追及したいと決意を述べた。同ネットワークは22日に東京都内で報告集会を開く。

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