オランダ・ハーグで発表した女性国際戦犯法廷最終判決(要旨)

日本政府は国際法違反

12項目を勧告し謝罪、 賠償、 真相究明を


 日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」が4日、オランダ・ハーグで発表した最終判決の要旨は次の通り。(「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」提供。)

 ◇個人の刑事責任

 被告人の権力と権威、被告人が「慰安婦制度」の犯罪性を認識していたこと、「慰安婦制度」の設立、維持、推進に被告人が関与し続けたことに関する認定から明らかにすべての被告人は「慰安婦制度」の一部として行われた強かんと性奴隷制についての個人として、また上官としての責任で有罪であるという結論に達した。したがって、「法廷」は昭和天皇裕仁、安藤利吉、畑俊六、板垣征四郎、小林性蹐三、松井石根、寺内寿一、東条英機、梅津美治郎を個人として、また上官としての責任で有罪とする。被告人らは強かんと性奴隷制を奨励し、維持した犯罪的な制度への関与を認識していたのである。

 被告人の指揮官としての地位と、指揮下にある軍隊が強かんを含む暴力を行使した可能性があることを知っていたか、または知る理由があったこと、軍隊を支配する権力を行使しなかったという前記の認定に基づき、上官としての責任または命令責任の原則により、山下泰文をマパニケ村の集団強かんで有罪と認定する。

 ◇国家責任

 個々の被告人に対する共通起訴状に加えて、日本国家が日本軍の行った強かんや性奴隷などの国際的違法行為に関して国際法の下において責任があり、この罪の犠牲となった女性に対する現状回復と賠償を求めるという訴えが提出された。

 「法廷憲章」はこの適用を認め、国家責任は罪の遂行とその罪から生じる国家の義務を履行しないこと両方を意味すると定めている。

 (国家責任の要素)

 一般的な国際法の下では、他人の正当な権利に与える国際的違法行為を行った国家は、その行為に対し責任を負う。その国家責任は国際法に反する犯罪行為をした個人の国際刑事責任に付加的に、また並行して存在する。国家は、その自らの指揮において、またその機関や官吏が国際的義務に違反し、国際的な罪を行った時にその違法行為について責任を負う。国際的義務に違反した時は、正当な方法の賠償をする義務が生じることは国際法の基本的な原則である。一般的にその義務は訴えられた罪が行われた時の国家に対するものであるとされてきた。

 (日本のおもな条約および国際法の違反)

 共通起訴状に対する判決で説明したように、われわれは日本国家がその官僚や官吏を通じて積極的に、共通起訴状において人道に対する罪に問われている1937年から45年までの強かんと性奴隷制の国際的違法行為を行ったこと、またそれを予防、処罰、保護しなかったことを認定する。日本の行為はまた、国際慣習法となっていた多くの条約義務に違反した。

 (日本国家の国際的違法行為の帰責性)

 この「法廷」が被告人の有罪を宣告した国際的違法行為である強かんと性奴隷制の罪、またそれに続く継続的な義務の不履行において、日本国家は国際法の下に責任がある。

 (記録の継続的な隠匿)

 「慰安婦」に関する記録の欠乏は、日本政府が降伏直前の破壊を免れた記録すら公表することを一貫して拒否していることによりさらに悪化している。

 (安全かつ真摯な謝罪の継続的な不履行)

 日本は政府の代表として被害者に妥当な謝罪をしておらず、その継続的な怠慢に対しての責任が生じている。

 (刑事責任を負う者の継続的な不起訴、不処罰)

 人道に対する罪は国際慣習法において普遍的裁判管轄権のもとにあり、どのような法律が起訴の時効を定めていても、その効果を免れる。

 (被害者からの正式な賠償請求に対する継続的な拒絶)

 被害者団体が行っている違法行為の認定と損害賠償を要求する法的努力に対する日本国家の抵抗は、国家が賠償のための法的責任を履行していないさらなる証拠である。

 (人間の幸福、尊厳、健全を保護する処置の不履行)

 (国家責任の弁護)

 (結論)

 以上の理由から国家責任の適用が妥当であり、日本政府は日本軍性奴隷制が生じた損害とそれから生じる継続的な責務の不履行に責任があると判断する。

 ◇勧告

 @「慰安所」の設置に責任あることを認め、この制度が国際法に違反するものであることを認めること。

 A完全で誠実な謝罪を行い、法的責任を認め、2度と繰り返さない保証をすること。

 B政府としての責任により、ここに証言されたさまざまな暴力行為を受けた被害者および類する人々の現状回復を損害に見合う賠償によって保証し、将来の再発を防止すること。

 C軍性奴隷制について十分な調査を実施するために、機構を設立し、資料を永久に保存して一般に開示すること。

 D被害者たちと相談のうえ、「真実と調停のための委員会」を設立し、戦争中および占領時代に犯されたジェンダーに関わる罪を歴史的に記録すること。

 E被害者たちの記憶をとどめ、「二度と繰り返さない」という約束を果たすために記念館、博物館、図書館を設立して彼女たちの尊厳の回復につとめること。

 F公式、非公式の教育制度を確立し、あらゆるレベルでの教科書に十分な意味づけを採録し、研究者および執筆者を奨学金や奨励金を含めて援助し、不法行為の実態や被害状況について特に若い世代に伝えること。

 G軍奴隷制とジェンダー偏向との関係について教育し、性の平等とあらゆる地域におけるあらゆる人々の平等性を尊重することが絶対不可欠であると教育するよう奨励すること。

 H送還を望む被害者は送還させること。

 I政府が所有する「慰安婦」制度に関するあらゆる情報、資料を一般に開示すること。

 J「慰安婦」の設置と実施に関する主たる責任者をつきとめ、罰すること。

 Kすでに亡くなった被害者に関して、その家族もしくは近親者から要望があった場合は、遺骨を探し返送すること。

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