現場から−金太奎(総聯徳島県本部委員長・56)

感動をありがとう

日本の小学校で朝鮮問題を講演


 「本校の6年生を相手にお話ししていただけませんか?」

 9月初旬のことでした。電話の相手は、徳島県板野郡吉野町にある一条小学校で6年生を担任する和田敏孝先生でした。

 今年に入って総聯徳島県本部では対外講演活動に力を入れました。とくに、日本の中高生たちに朝・日の歴史文化のかかわり、今も続く在日同胞への民族差別と政府の対朝鮮敵視政策などを知ってもらうことで、新しい時代に同じアジアの仲間として朝鮮と日本が正しい関係を築いていくための講演を行ってきました。

 しかし、和田先生の要請には少々とまどいを感じました。それは、今まで私が小学生を対象に講演した経験がなかったからですが、先生の熱心な要請で引き受けることにしました。

 私は先生に、子どもたちが在日朝鮮人問題で何を知りたいのかを聞いてもらうよう頼み、「なぜ朝鮮の人たちが日本にたくさん住んでいるのですか?」など13項目の質問に沿って、話すことにしました。

◇                         ◇

 10月17日、一条小学校6年生全員(2学級、44人)に約1時間半にわたり話した後、質疑応答を行いました。話を聞く彼らの態度は驚くほど真剣でした。事前に担任の先生が準備をしてくれたおかげもあったと思います。「知ろう」と集中する彼らの真剣な姿に感動を覚えました。

 数日後、全員から感想文が送られてきました。どれもしっかりと素直な感想がつづられていました。次のようなくだりもありました。

 「私は今まで在日朝鮮人についての差別はまったく知りませんでした。またそれと同時にこんなにひどい差別にも負けない在日朝鮮人の方々の強い意志に感動しました」

 さらに数日後、彼らから私に、次のような招待状が届きました。

 「…(金さんの)お話を参考にしたぼくたちの発表会を11月17日に行います。お忙しくなければぜひ見にきてください」

 当日、再び一条小を訪れた私は驚きました。会議室には、私が話した内容を項目別に整理した壁新聞が張り出されていました。子どもたちはそれらの内容について保護者たちに堂々と説明したばかりか、民族差別を批判する劇まで上演しました。一生懸命に準備して私を迎えてくれた子どもたちの生き生きとした姿と、彼らをここまで指導した担任の先生たちの努力に、深い感動を覚えました。

◇                         ◇

 今回の一条小6年生との交流を通じて、事前に十分な準備をして相手が求めるポイントに沿って噛み砕いてきちんと話しさえすれば、年は幼くても心に訴えることができるということを学びました。同時に、彼らの姿を通じて私たちが行っている活動の正しさを確認し、勇気と感動をもらいました。

 彼らは小学校6年生であっても決して幼いばかりではなく、大人が思っている以上に物事を深く考える素晴らしい力を持っていました。当初、子どもに対して持っていた私の先入観は完全に取り払われました。戦前に回帰したかのような日本の政治状況の中で、日本政府がいくら私たちに対して敵視政策を取り続けようとも、彼らのような子どもたちが成長してくれることによって、地方から朝・日友好の心を持った人たちが育ってくることでしょう。私は今回、それを確信することができました。

 最後に、素晴らしい機会を与えてくれた一条小学校の和田敏孝、中西秀子の両先生、また6年生のみなさんに感謝します。感動をありがとう。

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