同胞社会に向けられた朝鮮敵視政策

総聯弾圧、 民族差別的な権力乱用


 「朝銀問題」を口実にした総聯中央本部への強制捜査は、日本の朝鮮敵視政策がすでに危険な段階に達したことを示す事件である。

 総聯弾圧の背景には、日本の右傾化現象が指摘されているが、「9.11テロ」以降の情勢は、またしても「北朝鮮脅威論」を広め、民族排他の風潮をあおる構図を国内につくり出している。総聯に対する弾圧も在日朝鮮人社会の存立基盤そのものを脅かす圧殺策動の様相を呈している。

「始めに強制捜査ありき」

 総聯中央本部に至る一連の捜査の発端は朝銀東京の「検査忌避」。事件の本質は不良債権問題である。日本の都市銀行の場合には略式起訴で済んだ微細な経済事犯が、警察当局のリークとマスコミの扇動的な報道によって「巨悪な組織犯罪」へと拡大された。

 朝銀の経営難と破たんは、他の銀行と同様1990年代後半に始まった日本の金融制度の再編過程に起きたものであった。にもかかわらず捜査当局とマスコミは、総聯に対する融資に破たんの原因があるかのような論理を展開、それを「北朝鮮送金問題」と強引に結び付けようとした。

 単なる経済問題が政治問題へとすり替えられたわけであるが、そのプロセスを主導したのが「始めに強制捜査ありき」という警察当局の姿勢であった。

 強制捜査以前からマスコミは、総聯中央の元財政局長が開設、管理した仮名口座に朝銀東京の資金を不正に入金させたと伝えていたが、捜査当局が示した令状には、そのような容疑を断定する事実関係が明記されていなかったという。

 元局長は逮捕前、病気入院中であったが、捜査当局の事情聴取に応じていた。罪証隠滅、逃亡のおそれは無かった。しかし捜査当局は元局長の勾(こう)留を決定、総聯中央本部に対する捜査を強行した。真しに真相を究明しようとするならば、このような経過をたどるはずがない。

加速化する日本の右傾化

 日本における朝鮮民主主義人民共和国の実質的な大使館の機能を担う総聯中央本部に対する捜査は、首相官邸、外務省、そして警察などの捜査当局が協議し外交問題の見地から対処すべきレベルの問題である。今回の強制捜査が、どのような経緯をたどって実行に移されたか、詳細は確認されていないが、警察当局の行動を黙認する政治状況が存在するという事実には注目せざるを得ない。

 歴史教科書問題や首相の靖国神社参拝などで表面化した日本の右傾化の流れは、米国における同時多発テロを境に急速に進んでいる。「テロ対策特別措置法」制定により、戦時でも自衛隊の海外派遣が可能になった状況を踏まえ、小泉政権は有事法制の整備に着手しようとしている。

 日本は朝鮮敵視政策を一貫して追求してきたが、特に冷戦後は、自国の外交安保政策を推進するために「北朝鮮脅威論」を利用した。マスコミを巻き込み、総聯に対する謀略と弾圧を伴った「北朝鮮バッシング」が展開されてきた。

 現在、日本の軍国化政策の口実として、「北朝鮮脅威論」が持ち出される状況が生まれている。総聯中央本部に対する強制捜査は、アフガニスタンでテロ報復戦争を強行した米国が、イラク、朝鮮を次の「攻撃目標」に想定しているとの世論工作を展開している時期に行われた。警察当局の無分別な行動も「反テロ」をめぐる内外情勢との関連性が指摘されている。例えば、警察庁が先週、発表した「治安の回顧と展望」という文書は、「日本がテロの標的になる可能性」に言及し「米国から『テロ支援国』に指定されている北朝鮮の動向を注目」する必要があると強調している。

一致団結の必要性

 今回の総聯弾圧に対して、朝鮮外務省は「わが国の尊厳と自主権に対する侵害」であるとの見解を示し厳しく非難した。

 朝・日間のこう着状態が長期化することが予想される中、日本の朝鮮敵視政策が在日同胞社会に及ぼす影響も懸念される。すでに日本の都市銀行ならば救済の対象となったはずの不良債権問題が、朝銀のケースでは政治弾圧の口実となった。差別的な権力乱用であったことは明白である。

 今回の捜査と関連して日本の識者からも「朝銀が、不況の波をかぶって苦闘しているのを機に、警察力を動員して弾圧し、朝銀の経営権や資産に対して日本側が乗り込み、実質的に朝鮮人から奪い取る危険性が生じている」(前田朗・東京造形大学教授)との声が上がっている。一方、総聯中央本部に対する強制捜査の後、マスコミは朝銀の不良債権問題と朝鮮学校を結び付けて報道した。

 朝銀と朝鮮学校は、経済活動と民族性の維持という2つの側面から在日同胞社会を支えてきた柱である。日本の右傾化を背景に、ますます悪質になる朝鮮人敵視政策は、在日同胞の生活と活動の基盤に攻撃の矛先を向けている。

 総聯中央本部に対する強制捜査が行われた日、本部前で抗議のシュプレヒコールを叫んだハルモニは、「朝聯(在日本朝鮮人連盟)が強制解散させられた朝鮮戦争前夜をほうふつとさせる暴挙だ。断じて許せない」と語っていた。今、在日同胞が一致団結し、日本の一挙一動に警戒心を持って対処することが求められている。(金志永記者)

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