オンマの家計簿Q&A―韓鐘哲(22)
自営業の老後生活費の準備は
毎日決まった金額でやりくり
Q
焼肉店を営んでいる夫婦です。新聞や雑誌を見るとサラリーマン向けのお金の情報はたくさん出ているのですが、自営業者向けのものは目にしません。自営業の場合、老後生活費等の準備に対する考え方はサラリーマンと違うと思うのですが。 A 質問にあるとおり、新聞や雑誌のお金にまつわる記事は、ほとんどサラリーマンをモデルケースに扱っています。これは、現在の日本の所得者層からみるとサラリーマンが圧倒的に多いのが原因だと思われます。しかし、自営業者はサラリーマンと違い、定年退職と退職時にもらえる退職金、退職後の公的年金に上積みされる厚生年金などの企業年金制度がありません(最近は長引く不景気のため、退職金は必ず支給されるものとは限りませんが…)。ということは、当然のことながら老後生活の資金計画は、サラリーマンとは違ったものになってきます。在日同胞の所得者層は年々給与所得者であるサラリーマンが増えてきているものの、まだまだ自営業者の方々が多くの割合を占めています。今回は、このような自営業者の老後生活費の準備に対する考え方のポイントを説明します。 まずは、事業用のお金(事業用資金)と家計のお金をしっかり区別して、それぞれのお金の流れを把握するとともに、家計は給料のように毎月決まった金額でやりくりするようにします。自営業者の多くは、事業用のお金と家計のお金の区別が明確になっていない傾向があります。この二つのお金の区別を明確にしておかないと、事業収入が多いと家計の支出も多くなるということになりかねません。老後生活の家計を安定させるためにもなるべく毎月決まった金額でやりくりする癖をつけるようにします。 つぎに、「借入金の返済終了ゴール」を決めます。自営業者の借入金の特徴として、住宅ローンと事業用ローンの二つの借入れを持っていることが挙げられます。しかし、定年という収入の区切りがないため、つい長めの返済期間を設定しがちです。とくに事業用ローンは、いったい何歳で返済が終わるのだろうかと思うくらいの金額を借りているケースも少なくありません。住宅ローンについては、これからローンを組む方は、返済期間をできるだけ短くして、60歳前後に返済が完了するように設定します。 また、すでにローンを組んでいる方は、こまめに繰り上げ返済を実行し返済期間の短縮を図るようにします。事業用ローンは返済額を増やすのはもちろんですが、年齢を重ねるごとに徐々に借り入れる金額自体を少なくするよう努力してください。とくに注意が必要なのは、住宅ローンは団体信用生命保険(団信)に加入していると債務者に万が一のことがあっても保険金でローンの残債は返済されますが、事業用ローンは基本的に団信がつかないので、債務者に万が一のことがあると家族に借金が残ることになります。そのためサラリーマンよりも多い金額の生命保険に入る必要があります。 そして、「借入金の返済終了のゴール」と合わせて「老後資金作りのゴール」も決めます。例えば「65歳までに2000万円準備する」という目標を立てたとすると、65歳までの年数から毎月の積立額を逆算することができます。このとき、「借入金の返済終了のゴール」を「老後資金作りのゴール」より数年早く設定するようにします。こうすると借入金の返済が終了した後、その分を老後資金作りに回すことができるだけではなく、先々売り上げ等が思う通りに伸びなくても、借入金の返済が先に終了していれば精神的にも楽になるからです。 自営業者は定年がありません。これは自営業者の最大の魅力といえます。仮に60歳以降も健康で70歳まで働き続けることができれば、この間に大企業の退職金並みの収入を得ることも可能です。また、サラリーマンのように退職金を取り崩して老後を過ごすより、毎月入ってくるお金を使う方が精神的に良いのは間違いありません。 (ハン・ジョンチョル ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)=おわり |