月間平壌レポート  2001.12

渦巻く反日感情

卑劣な政治弾圧、各地で糾弾集会も


 朝鮮総聯中央本部に対する強制捜索のニュースは平壌にも直ちに伝えられ、各地で反日世論が噴出している。強制捜索の翌日(12月30日)に発表された朝鮮外務省の声明を契機に、各地で日本の警察権力による弾圧を糾弾する集会が開かれるなど、師走の平壌に反日感情が渦巻いている。(李松鶴記者)

捜索の映像が茶の間に

 われわれが滞在する、平壌市の中心街、中区域の一角に位置する平壌ホテルの事務室を訪れる来客数が12月に入って増えだした。

 強制捜索のニュースを見てたずねてきた人々が大半だ。

 長期にわたる滞在、取材で知り合った人は数多く、その後も連絡を取り合っている人たちだが、中には久しぶりに訪ねてきた友人、知人もいる。

 彼らは一様に「許せぬ弾圧」と述べたが、日本に明るく総聯をよく知る人々の怒りは強い。

 海外同胞迎接局のキム・ユホ局長は、記者に◆共和国の自主権に対する挑戦◆総聯に対する卑劣な政治的弾圧◆政府による断固とした措置――の3点を強調した。海外同胞迎接局は在日同胞をはじめ海外に住む同胞の祖国訪問の便宜を計るために設置されている内閣傘下の政府機関。キム局長の言明は外務省声明で明らかにされた立場であるが、実務機関である迎接局の幹部が直接本誌記者に政治的立場を表明することはそうたびたびあることではない。

 日本の不当な弾圧に対する指弾と非難を述べる事務室を訪ねた多くの人々の反応は、平壌市民の根強い反日感情を感じさせる。

 この反日感情は、朝鮮解放後半世紀を経た現在まで日本政府が過去を清算していないことに根ざしている。さらにその間、一貫して敵対政策を行い、総聯に対しても差別、弾圧を繰り返してきたことも反日感情の一因になっている。

 「日本政府が朝鮮総聯を弾圧」のニュースは、マスコミで大きく報じられており、マンスデチャンネルは映像を流しながらこのニュースを取り上げた。平壌のお茶の間に11月29日の光景が届けられたわけで、市民のもともと根強い反日感情が触発された格好だ。

 地方で糾弾大会が開かれたとき、取材に訪れた記者を食事に誘ってくれた一労働者が、「過去の過ちを認めないごう慢な日本を到底好きになれない。日本で苦労している同胞たちにわれわれが応援していることを伝えてほしい」と述べていたことが印象的だ。

 平壌市民の反日感情は反米感情に勝るとも劣らない。反日感情は反米感情に比べ、歴史的に深く根ざしていることを強く感じさせた。

27日前後に忘年会

 さて12月の平壌は寒い。平均気温は氷点下だ。

 「これからが冬本番。もっと寒くなりますよ」とは、ホテルマンの警告。寒さの絶頂は1月とのこと。

 市民の冬支度も峠を越え、子供たちは雪にはしゃぎ、大人たちは忘年会に忙しい。今日この頃の平壌の風景だ。ちなみに忘年会は今年最後の公休日である27日を前後した日に集中する。27日は社会主義憲法の制定日で公休日だ。一年をふり返り新年の抱負を語り合う。

 今年一年、外交面では明るいニュースが多かった。中国、ロシアとの友好関係が強化され西側諸国との関係も着実な進展を見せた。一方、北南対話は中断と再開を繰り返した。また、朝米対話は再開せず、対日関係は悪化した。

 しかし、市民はあまり意に介さない。局面に惑わされず、自らの信念に沿って一丸となって進めば、必ず道は開かれるというのが、苦しかった「苦難の行軍」時に得た知恵だ。

 冬支度にあいまって市内では、豆乳、キムチに加え、味噌、しょうゆなどの基礎食品輸送車が目立つ。

 「強盛大国」のスローガンのもと、食料増産に励んできた成果だろう。

 確実に食料事情は改善しており、市民の表情にも余裕がうかがえる。

 朝鮮では昔から大晦日に祖父母の家に一家全員が集まり、祭祀をとりおこなった後、家族みんなで夜を明かしながら新年を迎えるという。

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