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「天国のいちばん良い場所にあなたはいることでしょう。それよりも私は、スーパーマンじゃない、私だけの秀賢だった方がもっとよかった。戻りたい。タイムマシーンがあれば……」1月26日の夜、JR新大久保駅で、ホームから転落した男性を助けようとして電車にはねられた李秀賢氏(26)への想いを、恋人がつづっている
▼「僕は、最大限に人生を楽しんで過ごしたいと思っています。楽しむというのは、毎日、遊ぶということではなく、仕事をしても、勉強をしても楽しくして(中略)振り返ったとき、後悔しない生活をしている、そんな自分を作ろうと努力しています」――。李秀賢氏が、生前に開いたホームページには、こう書いてあった ▼マウンテンバイクに乗り、ギブソンのギターを愛する青年だった。98年には、自転車で南朝鮮各地を一周し、良心囚釈放のための集会に、ゲストとして出演したこともあった。つねに「後悔しない」ようにと心がけているから、とっさに行動することができたのだろうか。筆者に、その勇気があるのかどうかを問われても答えられない ▼彼のホームページには、34万件を超えるアクセスがあった。フリーボードには、1万件を超える弔辞が寄せられていた。すべて、彼の行為をたたえるものだった。海外同胞、日本人からもあった。彼の死を無駄にしないためにも本当に仲良くなれるように、と ▼ひとつだけ、やりきれなさが残る。秀賢氏の祖父は、日本の強制連行被害者だった。その清算を、日本政府がいまだにきちっと行っていないことだ。(元) |