地名考/故郷の自然と伝統文化
ソウル−G京畿道の民謡
トラジ打鈴と立唱の豊年歌
司空 俊
元旦に家族・親族らが一堂に集う(1910年)
漢江で釣りをする庶民ら(1910年)
京畿道の民謡の中でよく知られているのは「トラジの歌」であろう(トラジ=桔梗)。 トラジ、トラジ、トラジ/深山幽谷のトラジ/一株、二株掘り起こしたのに/山々にトラジ豊年が来たよ… トラジの打鈴(タリョン)は朝鮮各地でよく歌われている。代表的なものは忠清道牙山、黄海道信川、黄海道鳳山などである。 豊年歌は朝鮮のあちこちで歌われている。忠清道牙山や京畿道にも豊年歌がある。豊年歌はもともと広州山城の「ソンソリ」から生まれたらしい。「ソン」とは「立つ」という意味で、「ソリ」とは「声、歌」のことである。つまり「立唱」のことである。 立唱は5、5人が輪になって酒食しながら男女が交互に歌う。しかし、日本にあった「歌垣」ではない。だが、歌声を競いあうのだから、歌う方も、聞き手も真剣にならざるをえない。 立唱は古くから歌われているが歌詞の大要は次のようである。
来年の春、三月になれば、川に行きましょう/春が来た、春が来たよ/三千里に春が巡り来たよ/(はやし詞)チファジャ チョッタ、オルシグナチョッコ チョッタ/ 来年、春が巡り来れば、花煎遊びに行こうよ/
清川江、流れる水に/帯同船にのり、船遊びに行きましょう/あなたは何処に、何処に行ったのでしょうか/川のほとりに、エルファ洗濯に行ったとさ/無情芳草は、毎年咲くのに/行ったきりのあの人、永き離別なのか…
「歳拝」(セベ)のときもそうである。元旦に祖父母、父母にクンヂョル(お辞儀)をすることをセベという。両手を開いて手の甲を額に当て静かに深くお辞儀をしながら正座し、さらに頭部が床に着くまでお辞儀をし、静かに立つ。挨拶の仕方いかんでその社会的地位まで見抜かれる。 家で待っていた年長者に対して、子供や親戚、そのほかの年少者が「福を受けられるように」「いい年であるように」「長寿を祈願します」とかの挨拶をすることを「徳談」とも言う。その後、正月料理を囲んで、子供たちは年長者から「セベトン」(お年玉)をもらう。これが終わらないと、近くの親戚や友達、仕事関係の人々の家に年始の挨拶をすることができない。(サゴン・ジュン、朝鮮大学校教員) |