日本企業が朝鮮海砂の輸入計画
東海沿岸に豊富な資源
環境には「細心の注意」
朝鮮の天然砂の輸出数量 |
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2000年1〜9月 | 1999年1〜9月 | |
数 量 | 66,159 | 73,797 |
金 額 | 74,097 | 82,652 |
構成比 | 0.37 | 0.51 |
※朝・日輸出入商社の資料による。 単位は数量=トン、金額=1000円、構成比=%。 |
コンクリートの骨材や埋め立てなどに用いられる海砂を、朝鮮から輸入しようという計画が日本の企業の間で持ち上がっている。自然資源に富んだ朝鮮でもとくに、朝鮮東海一帯は海砂の有力採取地と言われる。加工・輸送コストなど実現に向けて課題も少なくないが、朝鮮側も「貴重な輸出商品」として前向きな姿勢を見せている。朝・日経済交流の拡大に向けて、今後の動きが注目される分野だ。
骨材補強などに利用/コスト面クリアが課題 海砂の輸入計画を進めているのは、日本の骨材会社や建設会社、セメント会社の子会社など10社で3年前に設立した「咸鏡南道海砂輸入研究会」である。 研究会の事務局を務める骨材会社、大倉(本社・横浜市)によると、日本国内における砂の工業利用のシェアは、85%が川砂と山砂、15%が海砂だという。 川砂・山砂と海砂は、用途が異なる。骨材補強のためセメントに混ぜるのには川砂と山砂、埋め立ての際の土台、クッション材には海砂が主に用いられる。 同研究会が目をつけたのは、この海砂だ。 塩分を含む海砂は、アルカリ成分がセメントと化学反応を起こし、セメントを劣化させるため、生コンクリートには適さない。だが、塩分を洗い流す「除塩」作業を行えば骨材にも使える。広大な海から取れるだけに量も豊富。除塩の設備とコスト面さえ整えば十分に使える代物だ。 輸出に前向きな朝鮮 同胞商社の朝・日輸出入商社(東京・上野)によると、朝鮮では1970年代から砂の輸出を試みており、一昨年の1年間に約11万トン、昨年には10万3000トンを輸出している。 朝鮮は輸出に前向きで、同研究会も「砂は十分、輸出対象になるとして、極めて協力的に接してくれる」と指摘する。 砂質がどうかも気になるところ。同研究会が昨年八月、朝鮮の有力採取地である咸鏡南道咸興市興南沖で、海砂を採掘調査したところ、「同じ海(朝鮮東海)をはさんでいるだけあって、砂の比重や粒子の大きさなど、日本と同程度で、質量とも豊富。日本の砂の代替品として十分に機能する。好感触を得た」(大倉)。質はプロの「お墨付き」だ。 これについては「多くの企業が、朝鮮の海砂の良質さを認識したうえで興味を示してくれている」(大倉)という。ただし、環境への影響については懸念をぬぐえない。 日本では、空港建設や埋め立て地の造成などに使うために砂を大量に削り取り、川に住む魚や微生物の生態系に大きな影響を及ぼした。そのため、1970年代ごろから、砂の採取が厳しく規制されるようになった。有力採取地である瀬戸内海沿岸を中心に、採取禁止の動きが広がっている。 この問題については、「海砂の輸出が朝鮮の環境破壊につながらないよう、細心の注意が必要」(朝・日輸出入商社)だ。 朝・日輸出入商社では、「今後も朝鮮と連携をひそかに取って可能性を追求したい」と、海砂が有力な輸出商品の1つになり得る点を指摘。コスト面の解決がスムーズに済むかどうかが最大の焦点だと分析している。 朝・日間の貿易経済拡大に向けては、同研究会も、「減少ぎみにある日本の砂関連市場の新たな起爆剤になるとともに、経済交流促進への大きな流れになれば幸い」と前向きだ。 具体的な輸入量などについては「今後、詰めていく」(大倉)とのこと。未知数の分野だけに期待感も大きいようだ。(柳成根記者) |