春・夏・秋・冬

 取材先で、先週号(出版不況)を読んだタクシー運転手をしている同胞から、私の話も聞いてくれと語りかけられた

▼彼は昨年まで、都内のあるパチンコ店で働いていた。ところが経営の不振から、他人に経営権が委譲された。新しい経営者は彼を、理由をはっきりさせないまま解雇した。「自分の意に合わない人間を止めて置いてはやりにくいという判断からのようだ」と推測する。路頭に迷う羽目になり、57歳の身を押して、転々と職探しに回った。そしてようやく行き着いたのがタクシー会社であった

▼朝5時に起床、7時に出勤した後、翌朝の5時まで車を走らせる。毎日その繰り返しで、後ろを振り向く余裕すらないという。タクシー会社の給与は歩合制。むろんボーナスは無い。目一杯走らせた結果の売上が月額30万円だとして、取り分はその50〜60%。そこから社会保険料などを引くと残りは微々たるものだという。家族の生活のために四苦八苦している同胞は実感をこめてこう言った。「同胞の生活はこれからどうなるのか。まったく先行きが見えない」

▼何もこうしたケースはこの同胞だけに限ったことではない。商工連合会の徐世教理事長は、同胞企業の倒産は年々増えているという。一方、「この不況時、資格は足の裏についたご飯つぶ。取っても食えないのだよ」という同胞有資格者もいた

▼「経済の2月危機説」「失業率320万人」「金融機関の破たん」。自分の生活は自分で守るという、あたりまえのことができない世の中になろうとしている。(舜)

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