当世の相談ごと(下)

封建的な凡潮打破を

金静寅


 これまでは同胞法律・生活センターに寄せられた多数の相談をもとに、離婚など具体的な例をあげて、女性と男性の違いなどについて思うまま、感じるままに書いてきた。

 私は、巷でよく言われる「女の底力」や「女は強い」ということや、また女性ならではの母性本能に基づく守りの強さなどを強調したいのではない。

 センターを訪れる女性たちの相談は離婚のみならず、不動産売買や登記、相続、金銭貸借や会社の経営上の問題など実に様々である。前々回にも書いたが、自分が真の当事者ではないことが多いのだが、同胞のほとんどが家族や親戚などで営まれる自営業で生計をたてているのが同胞社会の現状であることを踏まえると、当然ながら妻もそこで重要な役割を担っており、その意味では当事者かもしれない。しかしどのような問題であれ、何とか解決しようと必死で動きまわっており、相談の内容を聞いていると、一生懸命勉強もしているのである。私はこのように能動的・積極的に行動する同胞女性たちの姿を目のあたりにして、自分で自分の運命を切り開いていこうとする意思は、男社会で優位に生きる男性に比べ女性の方が強いのではないかと思っている。

 私たち在日同胞は今でこそ、それなりの生活基盤を築くことができるようになったが、そこには1世、2世の懸命な権利獲得運動と様々な艱難辛苦があったことは言うまでもない。私たちの生存権をも脅かす日本当局の数々の不当な弾圧に対して、老若男女を問わず全同胞が一致団結して闘ってきた。しかし穿った見方かもしれないが、在日同胞対日本当局という闘いの構図のなかで、他方では私たち同胞社会内部が抱える様々な問題、ここでは女性の地位や弱者への視点が欠落してしまったのではないかと考える。

 かつての儒教的・封建的な時代を生きた1世のハルモニたちはひたすら夫と婚家に尽くし、また夫の暴力や不貞にもただ耐えることのみを求められてきた。またそうしないと自立の術をもたない当時の女性たちは生きて行けなかったのである。今となっては、女性も教育を受け、社会に出て働き経済的な自立の道も開けてきたし、それなりに自分の進路を決定できるようになった。また国内外の女性の地位の向上の流れを受けて、同胞女性の意識も大いに変化を遂げており、もちろん夫や家庭も大事だが自分の生き方、人生についても真剣に模索している。変わらないのは男性の意識と男尊女卑の風潮だけで、女性の方が一歩も二歩も先んじているのである。それに気がつかないから、女性に三行半をつきつけられるのかもしれない。

 私は封建的な女性蔑視の風潮をうち破り、自分で自分の運命を切り開こうとする同胞女性こそ、チュチェ思想の実現者だと思っている。(同胞法律・生活センター)

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