こども 昔話

がまがえるの おんがえし

李慶子


 スニは かあさんと ふたりぐらし
 ちいさな畑をたがやしていた
 雨が たんと ふった夜 おなかを すかせた がまがえる
 のそのそ やってきて ごはん ちょうだい
 ごはんをやると ばくばく たべて
 ぐぐっ ぐぐっ
 子牛くらい おおきくなった
 おおきくなった がまがえる
 せなかに チゲのせて
 畑を てつだった
 パガジのせて
 水くみした

 こうして スニの家(うち)に すみついた

 春が きたよ

 あばれんぼうの 岩屋
(いわや)のおろち
 うれしくなって
 ふといからだを きしませながら 里へおりてきた
 腹 へったぁ
 首をのばして 馬をたべた
 それでもたりずに 牛をたべた
 そして
 やっぱり どんどん おおきくなった

 ある日
 スニをみつけた 岩屋のおろち
 すっかり スニが きにいった
 かわいいスニやぁい
 おいらの およめさんに なれぇ
 ならんと あばれるぞぉ およめさんなんか いやだ いやだ
 すると
 くろい くもが むくむくむく
 まっかな くちを あけた おろち
 ながい舌(した)に スニを ひょいとのせて
 岩屋に つれてった
 おいらの よめさんに なれ
 ろろろろ にかにか
 スニみて わらったよ
 でも やっぱり
 いやだ いやだ
 おろち おこった おこった
 おまえなんか くってやる
 するとね
 がまがえるが とびだして
 あおい けむり ぼこぼこぼこ
 おろちも まけずに ぼこぼこぼこ
 あかい けむり ぼこぼこぼこ
 あおい けむりと あかい けむり
 ぶつかって ねじれて
 山に どんがら
 岩に どんがら
 おろちの 岩屋に どんがら どんがら
 おろちも いっしょに どんがら どんがら とうとう
 おろちは 岩屋の したじきに
 スニは がまがえると 手をつないで
 かあさんの ところへ かえったよ

 【解説】
 昔話はもともと民衆の信仰や生活の中から生まれ、口承によって途絶えることなく発展してきたものだ。口承であるから当然モチーフは同じながら、微妙に違う話がいたるところに無数にちらばっている。

「がまがえるの おんがえし」に似た話に大ムカデ退治がある。いずれも動物の報恩談で日本はもとよりインド、インドネシアなど世界に分布している。(リ・ギョンジャ、児童文学作家)

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