解説

4月1日から施行
「個人債務民事再生手続き」(上)

破産回避し生活再建、一部返済すれば残額免除

―――殷勇基(弁護士)


 個人が自己破産せずに生活を再建するための「個人債務者の民事再生手続き」(以下「手続き」に略)が定められ、今年の4月1日から施行される。どのように利用できるのか、殷勇基弁護士(同胞法律・生活センター相談員)に解説してもらった。

◇    ◇

 これまで個人の場合、多額の借金の返済が難しくなると、破産、任意整理の2つの措置しか取れなかった(なお、会社の場合は、民事再生法が1999年に制定された)。

 今回「手続き」が施行されると、従来なら@破産するしかなかった人でも破産を避けられA住宅や土地を手放すしかなかった人でも、手放さず持ち続けられることが可能になりB従来、任意整理の場合でも全額を返済するしかなかったが、今後は、借金のうちの一部を3年(最長5年)で分割払いすれば、残額を免除してもらえることが可能になった。

 この「手続き」の対象となるのは、住宅ローン以外の債務(借金)が3000万円以下の人で、サラリーマンなど給与収入がある人。また、個人事業者であっても継続的な収入を得られる見込みがある人に限られる。端的に言うと、収入を容易に隠せる人はダメで、きちんと収入を把握できる人、それと、この先3年から5年の定期収入が見込める人となる。

 この「手続き」は裁判所に申し立てる。まだ裁判所の方でも準備段階だが、現時点では、弁護士に頼んで申し立てをしてもらうのが通常だと予想される。

 それでは、いくらを支払えば残りの債務を免除してくれるのかだが、金額の決め方は、サラリーマンと個人事業者では少し異なる。

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 サラリーマンの場合、金額を決めるには2つの関門がある。

 まず第1関門。分割払いの支払いの総額は、借金の総額の5分の一以上または、100万円のどちらか多い方でなければならない。

 例えば、借金が300万円なら最低100万円を、借金が600万円なら最低120万円を、それぞれ支払う。もっとも借金の総額が100万円以下の時は全額の返済が必要だ。逆に、借金が1500万以上の時は、返済総額が300万円以上なら総額の5分の1でなくても可能となる。

 次に、第2関門。次のような数式で求められる可処分所得の2年分を分割払いで支払う必要がある。

 「全収入」−「最低生活費」=「可処分所得」

 この可処分所得の2年分(以上)を原則3年間、最長5年間で分割払いする。これを支払えば、残額は免責になる。結局、収入から、まず最低生活費は引いて使うことができるし、残った金額(可処分所得)も全額は返済に回さなくてもいいという。

 例えば、50万円の月収がある人が3年の分割払いをする場合を例に取ると、50万円−20万円程度(最低生活費)=30万円(可処分所得)。30万×2÷3=20万円(支払額)となるので、月20万円を支払いに回わせばよい。次に「最低生活費」の計算だが、これは「生活保護レベルの金額」ということになっている。例えば、4人暮らしなら20万円くらいではないかと思う(これも施行までには、裁判所が基準を示す)。

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 個人事業者の場合も、2関門ある。1関門目はサラリーマンと同じだ。

 2関門目は、分割払いの計画に債権者総数のうち半分の業者から反対されず、かつ債権総額の過半数を占める業者から反対されないことだ。それでもサラリーマンのときと同程度の案をだせば反対されないことが多いだろう。

 以上の条件を満たしていると認めれば、裁判所が申し立てを認可する。ふつうのケースなら申し立てから認可まで6ヵ月位の予定だ。

 なお、以上はあくまでも債務者本人に対するもので保証人には適用されない。したがって、債権者は保証人に対しては、そのまま債務の履行を求めることができる。保証人がそれを防ぐには、保証人自身が別に、民事再生を申し立てる必要がある。(ただし住宅ローンの保証人についてはこれも次回によるように救済される) (ウン・ヨンギ)

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