助成金未支給の八王子市長ら、西東京朝鮮第1初中を初訪問
授業参観、現状説明受ける
「保護者の会」の呼びかけで実現
中3の美術の授業。絵を描く生徒に、「『ゴジラ』は
朝鮮語でどう書くの?」と尋ねる黒須市長
朝鮮学校生徒が居住する都下の学区下で、助成金をまったく支給していない市の1つである八王子市。西東京朝鮮第1初中級学校教員ら関係者と保護者はここ数年、同市に対して助成実施を求める要請をたゆみなく行ってきた。その努力が実って八日、黒須隆一同市市長が同校を初めて訪れ、呉在根校長の案内で授業参観するとともに学校運営の現状などに対する説明を受けた。 (李明花記者) 民族心培うのは当然の事=^認識不足、力になりたいと語る □ □ 同校を訪れたのは黒須市長と秋山進市議会議員(公明党)、岡部正明市庶務課長の3人。午前10時から1時間ほど滞在した。 まずは、初級部4年生のクラスを参観。児童全員がそれぞれ好きな本を読む授業を行っていた。教室に入った市長は校長の説明を受けた後、熱心に読書をする児童に、「もう日本語も朝鮮語も読めますか?」などと質問を投げかけていた。 次に中間試験の最中だった中級部の教室に入ると、市長は「気が散っちゃうだろうな」ととまどいながらも、生徒の答案用紙を興味深げにのぞきこんでいた。 その後、総聯西東京本部の金清委員長、金光男・同校教育会会長らと懇談した市長は席上、他市が同校に行っている助成金支給状況について説明を受けた。日本の学校となんら変わりないカリキュラムを組んでいることについて話が及ぶと市長は、「日本の私塾などとはまったく違うのに、『各種学校』扱いされているとは」と語った。 授業参観の印象について、「児童がとても元気で明るい」と述べながら、「歴史的経緯も含め在日の人々が朝鮮学校で民族的アイデンティティーを培うのは当然。八王子市民の、朝鮮学校に対する認識がまだまだ足りない。これからは力になりたい」と語った。 □ □ 訪問は、昨年4月の選挙で新しく就任した黒須市長に、同校関係者と「保護者の会」らがねばり強く呼びかけた結果、実現した。 とくに同会は3年前の結成以来、八王子市などに対して「保護者補助金」の支給実施と、市関係者の学校訪問を再三にわたって要請してきた。しかし、行政の反応はいまひとつで、当時の市長は最後まで会ってもくれなかったという。 同校は祖国解放以前、八王子小比企町の大規模地下壕、立川飛行場、高尾軍用道路、青梅線鉄道敷設工事などに従事させられた一世同胞らによって解放後、奪われた民族の言葉と文字を取り戻し子供たちに教育の場を、と建てられた。 こうした歴史的経緯などをふまえ、現在学区下17の市が「保護者補助金」の支給に踏み切っており、その額は年間400万円になる。都も、年間400万円の助成を支給している。 また狛江市は、来学年度から生徒1人当たり年間1万円の補助支給を決めた。西東京市と学区外の三鷹市でも、補助の実施が議会で決議されている。 □ □ それでも学校運営は厳しく、寄付など保護者らの負担も限界に達している。 金光男会長は、「保護者への負担が大きいので、民族教育を受けさせたくてもそうできない家庭もある」と指摘する。 「1円でも保護者らの負担を軽減することが求められる」(金会長)が、生徒が多く居住する小平市(35人)と八王子市(33人)、それにあきる野市(2人)は現在も助成を行っていない。 今回、助成実施について黒須市長は具体的な言及はしなかったが、「民族教育に理解を示してくれたようだ」(呉在根校長)。今後の動きに期待が寄せられる。 |