非営利、2人以上で法人に近く導入予定の

「共同法人」制度

梁英哲
(弁護士・在日本朝鮮人人権協会近畿地方本部会員)


 同じ目的を持つ人の集まりで、営利を目的としない団体が手軽に、法人格を取得することができる「共同法人」制度が、近く導入されるという。これまで公益法人でもなく、株式会社でもない、いわゆる中間法人を簡単に設立する制度がなかったが、制度が導入されると、2人以上の個人が集まれば簡単に法人が作れるようになる。今までこうした制度がなかったため、事務所を所有したり、預金をする場合、代表者の名前を使ったりする場合が多かったが、その代表者が死亡した後、遺族が間違って処分したり、債権者が差し押さえるといったトラブルが起きやすかった。この制度が導入されると、例えば、オモニ会やアボジ会、同窓会、支部のサッカー部などが法人の資格を持つことができる。在日本朝鮮人人権協会近畿地方本部会員の梁英哲弁護士に同胞社会でどのように活用できるのか、などについてシミュレーションしてもらった。

どのように活用できるのか/シミュレーション「東中オモニ会」

 法人格を持つ意義を簡単に説明すると、預金口座の開設、事務所の賃借、自動車や不動産の所有などの行為が、団体名だけで行えるようになる。つまり、今までは団体の役員の個人名で行っていた行為が、団体の名前だけでできるようになるのだ。

 ここでは、仮に東大阪朝鮮中級学校オモニ会(以下、「東中オモニ会」に略)という共同法人が設立されたことを仮定し、共同法人についてのシミュレーションをしたいと思う。

 以下、法務省民事局法人制度研究会が公開している「法人制度研究会報告書」(www.moj.go.jp/PRESS/990903/01.html)や議事録(www.moj.go.jp/SHINGI/001212 1.html)等を参考に記述する(なお、将来共同法人制度が成立した場合に修正が加わることもあり得る)。

◇    ◇

 まず、共同法人「東中オモニ会」が、設立したと仮定した場合について。

 東中オモニ会は、東中に通う生徒・卒業生のオモニを中心に、東中のクラブ活動、運動会や学芸会などの行事の支援、サークル活動を通じてのオモニ同士の交流を行う会だ。

 活動当初は10人前後のオモニの集まりに過ぎなかったが、現在は会員が300人に増え、1人当たり年3000円の会費、賛同団体からの寄付金の管理に不便をきたし始めた。会が大きくなるにつれて集まる金額も大きくなり、名義人となった個人に負担が行くようになった。

 そこで、東中オモニ会の中心的メンバー10人が発起人となり、会の基本財産として300万円を集め、共同法人「東中オモニ会」を設立することになった。

 こうして、団体名での登録となれば、例えば、代表者個人が差し押さえを受けた場合や、破産した場合などは、会に影響を及ぼすことはない。

◇    ◇

 設立手続は、人権協会所属の司法書士の先生に依頼することになった。事務所は、子供が独立して空きスペースがある、金オモニの自宅に決めて、法人の基本的な決め事である定款を作成し、法務局への登記を済ませた。

 金オモニをはじめ三人のオモニが理事になり、金オモニの自宅に「東中オモニ会」名義で電話を引き、「東中オモニ会」名義の預金口座で寄付金と会費を管理することになった。会を通じての、東中クラブの遠征費の援助も円滑になり、オモニ同士のサークル活動も活発になった。会の活動に賛同した商工人からの寄付も増えた。

 年に一回の総会は、東中の講堂を借りて行われ、新しい理事の選任や会計報告が行われる。総会を通じ、会運営の内容が明瞭になり、また会に関する会員の自主意識が向上し、ますますオモニ会の活動の幅が拡がり、会員の数も増えた。

 以上、共同法人設立のシミュレーションだ。同胞社会の中にも活用の余地がある制度だけに、活用方法は、同胞の知恵次第となる。

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