商工連活動の最良の案内書

記念集「在日朝鮮人商工連合会55年」の発行に際して

呉圭祥


 在日本朝鮮人商工連合会結成55周年を迎えて、商工連から記念集「在日本朝鮮人商工連合会55年」(215ページ)が発行された。

 去る2月22日、ホテルニューオータニで開催された結成55周年を記念する集いで参加者たちに記念品として配られた。

 この記念集は沿革史をまとめた「在日本朝鮮人商工連合会55年」と写真編、資料編、そして付録で構成され、211点にのぼる写真、歴代役員名簿、年表、各種の統計などが整理されている。

 記念集は同胞商工人必携の「座右の書」であることはもちろん、在日同胞と在日朝鮮人運動にかかわる人々の良き参考書、解説書になると言えよう。

 執筆に携わったひとりとして、発行が持つ意味と内容について若干、記してみる。

「55年」発行が持つ意味

 なによりも商工連の活動についてまとまったものが久しく出版されたことである。

 商工連は1956年11月に「在日本朝鮮人商工便覧1957年版」を発行し、その後パンフレットや資料集のようなものは随時出しているが活動全般を網羅した本格的なものは出していない。44年ぶりともいえる出版である。

 次に本書の中身が歴史、年表、写真、統計などをトータルに整理され公開されたことである。不足点はあると思うが本書は商工連の活動全般を理解するために必要な内容がほとんど記されている。本書は商工連活動の現時点における、「最良の解説書」といっても過言ではないと思う。

 次に発行の意味は沿革をまとめたことにある。いかなる組織も沿革を整理するのは過去の活動に対する総括と教訓を整理し今後の足がかりにしようとするものである。55年の沿革史は20世紀から21世紀を展望し、同胞商工人の企業活動、在日朝鮮人運動が転換点にある時期に出版されたことに意味がある。

沿革が示唆すること

 本書では商工連の55年を@草創期A高揚と試練B変革と創造への道C新たな使命と役割D経済専門化の推進の5つに区分して沿革をまとめている。

 商工連の55年はなによりも、祖国とともに歩んだ道のりであることが如実に描かれている。とくに金日成主席と金正日総書記の賢明な指導と温かい配慮のもとに発展してきたことを物語っている。

 次に商工連の歴史は同胞商工人の企業権、生活権を擁護・拡大してきたたたかいの歴史である。日本当局は同胞商工人に対し、差別や管理の対象とみなし権利として何1つ与えたものはない。現在、同胞商工人が行使している諸権利は総聯の指導のもとに商工連と各地の商工団体そして同胞商工人たちが固く団結して莫大な労力と時間を費やして獲得したものである。また商工連の55年は、民族的愛国運動に積極的に寄与した歴史でもある。商工団体と同胞商工人たちは、民族教育と権利擁護をはじめとする総聯活動全般の強化と発展のためにそして祖国の統一と隆盛発展のために積極的に寄与した。

 商工連の歩みをたどると同胞組織の経済機関はほとんどが商工団体から派生した事が読み取れる。民族金融機関である朝銀の設立、共和国との貿易商社、合弁推進委員会、青年商工会などが商工団体との関連の中で生まれた。母体のような役割を担ってきたといえよう。

これからの展望

 本書には様々な統計が掲載されている。同胞商工人の実態把握が難しいなかで九九年のアンケートなど各種の統計は一次資料として大変貴重なものだ。

 同胞の就業構成を見ると二極化している。70年ごろから顕著化した商工人化傾向とともに、最近では給与所得者(サラリーマン)化傾向もはっきりしてきている。その割合は10中6対3ぐらいといえる。それぞれの現状分析と具体的対策が求められる。「55年」から求められているのは、同胞商工人の経営理念と戦略的思考ではないのか。同胞商工人は日本経済の枠組みを見極め朝鮮人企業家、商売人としての独自性、個性を生かすべきであろう。また商工連は税金対策、協同組合事業、融資問題などを引き続き強化し、経営改善、人材育成、企業管理、新分野開拓などを進める経済専門団体化を促進し、同胞商工人の良き経営アドバイザー集団と洗練させて行くべきではないか。

 本書は弾圧と差別、日本企業に比較できない脆弱性などの困難に打ち勝ち55周年を迎えた商工連が、21世紀の時代的要求をしっかりと捉え同胞商工人と民族的愛国運動の発展のためにより一層活躍することが読み取れる好著である。(オ・ギュサン、朝鮮大学校政治経済学部長)

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