そこが知りたい

朝鮮と修交するEUの経済的動機は

市場と資源への要衝
豊富な鉱物にも熱い視線


  朝鮮は、ドイツ(1日)に続いてルクセンブルク(5日)と大使級外交関係を樹立した。また、ギリシアとも近日中に修交が発表されると言われている。これで、EU15ヵ国のうち、アイルランドとフランスだけが朝鮮と未修交関係にあるが、これらの国々との修交も、時間の問題と見られている。この修交ラッシュの意味するところは。

  大きく分けて2つある。1つは、1月29日付の本紙「ニュースの目」でも紹介したように、米国の対朝鮮圧殺政策の破綻。

 これまで米国は、朝鮮を政治、経済的に封鎖するために、同盟国に対して朝鮮と修交しないよう圧力をかけてきた。しかし、圧力は功を奏さず、よってクリントン政府はペリー前国防長官を対朝鮮政策調整官に任命し、政策の見直し作業を行った。そして、そのペリー調整官が出した結論というのが、朝鮮は崩壊しないというものだった。これで、米国と親密な関係にあったEU各国も、大手を振って朝鮮との国交樹立に臨めるようになったというわけだ。

  もう1つの意味は

  EU諸国の世界戦略と関連する。経済的理由だ。
 1月に朝鮮と国交を樹立したベルギーの朝鮮駐在大使は、「自由アジア放送」(2月10日)とのインタビューで、朝鮮とベルギーとの懸案について説明する中で、「経済的側面から見るとき、多くのベルギー企業が朝鮮との貿易だけでなく、将来の投資の可能性についても関心を見せている」と紹介した。

 20世紀の終わりにEU諸国はユーロ通貨を誕生させた。これによってドルは、「世界唯一の機軸通貨」としての機能を失い、21世紀にはドル通貨圏とユーロ通貨圏との対立も予想される。そして、アジアに対するEUおよびユーロの影響力を増大させようというのが、EUの世界戦略だと考えられる。

 とくにアジアは、北米やEUのように経済圏を形成するだけの経済規模を備えているものの、日本の過去の問題や中国・台湾問題などで共通通貨を持つには至っていない。

 EU諸国の朝鮮との修交は、こうしたアジアにEUおよびユーロの影響力を増大させる上で重要な要素になっていると言える。

  朝鮮との修交でEU諸国にはどのような経済的メリットがあるのか。

  3つ考えられる。

 1つは地政学的理由。

 現在、新義州とソウルを結ぶ京義線の復元工事がはじまっており、さらに元山とソウルを結ぶ京元線を復元させる問題も、朝鮮とロシアとの間で協議されている。

 京義線は中国を経由して、京元線はロシア・シベリアを経由してそれぞれヨーロッパと結ばれる。

 今年の一月、「ロシアの声」放送が伝えたところによると、シベリア鉄道はアジアとヨーロッパ間のもっとも短い陸路で、極東地域のナホトカからヨーロッパのベラルーシ、ポーランドまで貨物を運んだ場合、同鉄道を利用すると九日間しかかからないのに対して、海上輸送では、1ヵ月以上かかると紹介した。

 それから朝鮮半島の隣には、日本という成熟した市場と中国という巨大な成長期の市場、さらにシベリアには豊富な資源がある。京義線および京元線が連結されれば、EU諸国はこうした市場と資源に簡単にアプローチできるようになるのだ。

  2つ目の経済メリットは。

  朝鮮に豊富な地下資源があるということだ。とくにマグネサイトやタングステンといった貴重な鉱物資源が多く、これらはハイテク産業に欠かせない。

 今年1月、スイス・スウェーデン系の多国籍企業「アジア・ブラウン・ボベリー」の代表団が訪朝したが、同社は朝鮮側と経済協力と合弁事業を行うため、可能な限り早い時期に平壌に事務所を設置することを決定したと明らかにしている。

 同社は、ボルボなど7つの企業と共同で経済協力を行うが、朝鮮の地下資源に大きな関心を持っているという。

 3つ目の経済メリットは、安くて良質の労働力。イタリア貿易公社のピカリエロ・ソウル支社長は「朝鮮は良質の労働力を持っている。他のアジア国家である中国やベトナムに比べて人件費も安い方だ」と述べている。

   昨年6月の共同宣言発表以 来、北南経済協力が活発になっているが、その一方で「北との経済協力はメリットがない」という声も聞かれる。同じ民族でさえうまくいかないのに、まして外国人となると、はたして経済協力がうまく行くのかどうかという懸念もあるが。

  1部のマスコミが経済協力の不振部分だけを意図的に取り出して報じ、また、1部の企業が自分に都合の良いことだけを公表している節がある。その証拠として八九年からはじまった北南間の交易が昨年、初めて4億jを突破した事実を挙げられる。交易額は年々増加しており、北南経済協力が不振ならば、増加するはずがない。

 ちなみに北京で北とソフトウェアの共同開発を行っている三星電子の朴英和副社長は、南の技術と北の優秀な労働力が結合すると相乗効果が生まれ、ソフトウェア開発は双方が勝利する「ウィンウィンモデル」だと述べている。

  外国との経済協力では。

  国際貨物運送サービス企業のDHLは、97年11月に平壌に事務所を開設したが、「業務量が初期に比べて180%増加し、収益も二倍に増えた」(朝鮮民主主義人民共和国の貿易 昨年4月号)という。

 また、スイスの日刊紙ル・タンは昨年11月14日付で、同国の運送会社のM&M社が、すでに15年前から朝鮮に進出して利潤を挙げていると報じ、対朝鮮窓口開設から取引方法にいたるまでの同社の経験を詳細に紹介したが、朝鮮の制度・文化を尊重することが成功の秘訣という内容だ。

 このほか、駐韓米商工会議所が朝鮮に進出するため、自国政府に対朝鮮経済制裁の解除を早くから求めていることなど、いまや朝鮮は、世界中の経済界から熱い視線を浴びていると言えるだろう。

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