地名考−故郷の自然と伝統文化

大田−新たな観光都市

東洋最大ラジウム含有の儒城温泉


朝鮮最初の機関車(1899年)


  ソウルから167キロメートルのこの町は、1949年に市制がひらかれたが、ほかの都市に比べて歴史の浅い都市である。四方を山に囲まれた大田盆地に位置し、市内を錦江の支流の大田川が北西方に貫流する。

 李朝末までは、ハンバル(大きな畑という意味)と呼ばれた寒村にすぎなかった。このような静かな農村であったが、1905年の京釜線と14年の湖南線の架設により、その分岐点として交通要地の街になり急速に発展した。また、32年、道庁が公州から移転されて大きな都市へと変わった。

 それから70年を経て、今は忠清南道の行政、文化、教育、産業の中心地となっている。

 最近は、ソウルから官公庁などの移転も進んでいる。

 近郊には、儒城温泉や鶏竜山国立公園があり、さらに扶余や公州など周辺都市への観光の1泊圏内の出発点のひとつとなっている。

 幹線道路が大田からのび、3つの生活圏、すなわち首都圏、釜山圏、光州圏を結ぶ交通都市なのである。大田川と鉄道と道路に沿って市街地がつくられている。

 京釜高速道路によって、ソウルとの間で流通も盛んに行われている。また、工業団地も造成されている。電子工業が生まれ、従来からの紡績工場も動くなど、消費都市から産業都市へと生まれ変わりつつある。また、「大徳研究学園都市」が入っており、工業用水は錦江中流を堰(せ)き止めた「大青ダム」で解決できるようになった。

 北方14キロメートルに新灘津(シンタンジン)タバコ製造工場がある。付近は「黄葉種タバコ」の名産地で、良質の原料を利用してつくられたタバコの「扇」、「青磁」、「南大門」、「亀船」などがあり、人気を集めている。

 大田駅地区を中心に朝鮮半島を横断する形で広がるウラン鉱床が発見された。

 大田駅から10キロメートルの静かな田園の中には東洋最大のラジウムを含有する儒城温泉がある。地下600メートルから湧き出る泉温45度のアルカリ単純泉で良好な水質を誇る。皮膚病、胃腸障害、関節炎、神経痛、糖尿病の治療に効果があるという。温泉施設も整っているので、ソウルからは30分ごとに直行バスが出ている。

 大田川の南方、海抜500メートルほどに、小山がある。宝文山である。山頂からは大田市街を一望することができる。山腹に公園があり、市民の憩いの場になっている。

 儒城区大徳研究団地には最先端の科学技術を紹介する「国立中央科学館」があり、4分野(自然史、科学技術史、自然科学、技術)の展示がされている。天文館には南朝鮮最大のプラネタリウムがある。同時に古い時代をみるためなのか、古い帆船や伝統楽器なども展示されている。(サゴン・ジュン、朝鮮大学校教員)

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