取材ノート
侵略の歴史は消せない
「私はいつか消えて行く人間。しかし、私が死んでも日本の国がどういうことをやってきたか、という歴史は残る。日本の国はそれをきちんと理解すべきだ」
在日朝鮮人の性奴隷被害者として唯一、日本政府の謝罪と補償を求める裁判を闘っている宋神道さん(78)は、昨年11月、東京高裁が請求を棄却したことに憤慨し、こう言った。 侵略戦争の史実をわい曲した「新しい歴史教科書をつくる会」が作成した教科書の内容に対して、アジア諸国から厳しい非難が浴びせられている。1982年に教科書の歴史わい曲問題が深刻な外交問題になった時、日本政府は教科書検定基準に「近隣諸国条項」を取り入れる形で問題を処理したが、「つくる会」の教科書が検定をパスする可能性が高まっていることは、この「近隣諸国への配慮」が小手先のものであったことを示している。 日本の植民地支配の全容解明はつねに被害者側から提起され、取り組まれてきた。それは、日本政府が戦前から関連資料を焼却し、過去の史実を覆い隠してきたからだ。事実を隠ぺいしたうえ、自分に都合のいい「物語」を教科書にし、教育現場に普及しようとしている―。こうしたことにアジアの国々が危機感を募らせるのは当然のことだ。 1日、北南朝鮮の歴史学者たちが平壌に集い、日本の植民地支配の不法性を論証する討論会と資料展示会を開催し、1400余点の資料をもって植民地支配の不法性を訴えたのも、過去を否定する日本の「確信犯」に警鐘を鳴らすためだった。 森内閣の7閣僚は「つくる会」の活動を支援してきた自民党の「歴史検討委員会」に名を連ねる「確信犯」。だからではないが、おそらく「つくる会」の教科書はパスするだろう。それは、アジアと日本の溝をさらに深める結果につながる。非難の声があがらない日本の状況にいらだちが募る。(張慧純記者) |