そこが知りたいQ&A
Q朝米基本合意 |
米が見直しを示唆したが |
A修正には朝鮮の同意が必要
朝鮮 いかなる政策にも備え ブッシュ政権 Q米国のパウエル国務長官が1994年の朝米基本合意文の見直しを示唆したと報じられているが。 A8日の米上院公聴会で、パウエル国務長官は「(朝米基本合意について)当面順守するが、いくつかの側面について修正や変更を検討することは妨げられない」と述べた。政府高官として見直しを示唆したのは、パウエル長官が初めてだ。 またパウエル長官は、朝米基本合意によって米国が朝鮮に提供することになっている軽水炉について「どのように使われるか、いかなる監視が行われるかについて一部に懸念がある」「軽水炉に代えてほかの発電施設を提供することを提案する人もいる」と語っている。 Q米国は、本当に基本合意を修正する考えなのか。 Aパウエル長官の発言は、修正の可能性もあることを示しただけで、決定ではない。 Q基本合意を破棄、修正することは可能か。 A理屈としては可能だ。しかし、朝米基本合意および昨年10月の朝米共同コミュニケは、正式な外交文書=条約の一種なので、双方が順守する義務を負い、修正する場合、相手国との合意が必要だ。したがって、米国が一方的に修正すると言っても、朝鮮が応じなければ修正できない。 また、基本合意では米国が朝鮮に軽水炉2基を提供すると約束し、それを実行する下部組織として朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が設立された。 KEDOには、米国のほかに南朝鮮、日本、EU、オーストラリアなども出資している。これらの出資国との協議も必要だ。南朝鮮、日本はさておいて、NMD(国家ミサイル防衛システム)問題で米国は、EUと不協和音をかもしているという事実を無視するわけにはいかないだろう。 Qとすると、基本合意の修正は無理ということか。 Aそうではない。あくまでも朝鮮との協議で、双方が合意に達すれば十分に可能というわけだ。 Qしかしブッシュ政権は、朝鮮との協議について消極的な態度を取っている。朝米協議がうまくいかなければ基本合意の破棄を通告するのではないか。 A朝鮮側は、米国のいかなる対朝鮮政策にも備えがあることを再三にわたって表明している。米国が基本合意を順守するも良し、破棄するも良しで、「目には目、歯には歯」というわけだ。 でも、実際問題として米国の基本合意の一方的破棄は、米国にとって最悪のシナリオを意味する。 Q米国にとって最悪の事態とは。 A核および大量破壊兵器の拡散防止は、米国の世界戦略のうちもっとも重要な問題の一つだ。それは、核の拡散が米国の超大国としての地位を脅かすからだ。 そもそも朝米基本合意の出発点は、米国がねつ造した朝鮮の「核開発疑惑」にあった。朝鮮の「核開発疑惑」による周辺国(日本)の核開発誘発を恐れたのだ。98年のインドとパキスタンの核開発競争のように。そして、最初は力によって疑惑を解明しようとしたが、多大な犠牲者が出ることを恐れて断念。最終的に軽水炉を提供することで妥結をはかった。 米国が軽水炉の提供を放棄すると、朝鮮は当然、エネルギーを確保するために原子力発電所を自力で建設することになるだろう。すると、米国が口実にしてきた「核の透明性」が失われることになる。 Qさきほど、パウエル長官の合意書見直し発言は決定ではないと言っていたが、ブッシュ政権の対朝鮮政策はまだ定まっていないのか。 A定まっていないと思われる。 まず、朝鮮半島問題の3人組と言われる南朝鮮駐在大使、KEDO事務局長、朝鮮半島平和担当特使が、まだ任命されていない。対朝鮮政策を具体的に検討するのは、この3人が任命されてからだろう。 つぎに、ブッシュ政権内部のあつれき。8日付の米全国紙USトゥディーは、ブッシュ大統領とパウエル長官が異なった対北信号を送ったのは、米政権内部の不和のせいだと指摘している。 チェイニー副大統領は心臓発作で緊急入院したにもかかわらず、金大中大統領とブッシュ大統領との会談には出席した。そして、その首脳会談で、当事者であるはずのパウエル長官が「蚊帳の外」に置かれていたという報道もある。 米行政府に詳しい消息筋によると、チェイニー副大統領とパウエル長官はライバル関係にあり、また、国防次官就任が有力視されていたアーミテージ氏が国務次官に任命されたのは、ラムズフェルド国防長官に配慮したからだとも言われている。ちなみにラムズフェルド長官、アーミテージ次官は、クリントン政権時代に対朝鮮政策に関するそれぞれ内容の異なる報告書を発表している。 Q今後の朝米関係の行方は。 Aブッシュ政権の対朝鮮政策の骨格が固まるのは、5月以降と見られている。しかし一方で、朝米基本合意で米国が約束した重油の供給が滞っており、軽水炉建設も遅れているという現実がある。 いずれにしても、ボールは米国にあり、ブッシュ政権の態度次第だといえよう。(元英哲記者) |