春・夏・秋・冬

 春は名のみ、の気候。啓蟄(けいちつ)を過ぎ這い出してきた虫たちも冬眠に戻りそうな寒さが続く。何だか朝米関係に似ているな、とふっと思った。その矢先、金大中訪米中にパウエル国務長官は、対北政策の見直しが朝米対話の基調となっている94年10月の朝米基本合意にまで及ぶことを示唆した

▼ブッシュ政権のもっとも恐れているシナリオは、「朝鮮問題の朝鮮半島化」だという。つまり朝鮮問題を朝鮮民族の手によって解決されては困る、というのだ。金大中訪米に先立ち、外交通商部長官が訪米したにもかかわらず、その後すぐに国家情報院長を呼びつけたのも昨年6月の首脳会談後の、朝鮮半島情勢を包み隠さず報告させるためだったという。朝鮮民族が何をしようとしているのか、疑心暗鬼なのだ

▼それにしても、朝米基本合意の見直しにまで言及するとは、「外交は素人」と指摘されるブッシュ政権の本質を見せつけている。軽水炉を朝鮮が保有することに対する懸念、より手軽に供与できる火力発電への代替えなどの理由を上げているが、何をいまさら、である

▼軽水炉完成の折に朝米原子力協定が締結されること、さらに火力に至っては基本合意の締結に当たって実務レベルで散々、論議し尽くされたものである

▼こうした経緯を知らぬ訳はないと思うが、知っていて言及したのであれば確信犯。100万人の犠牲者が出ることをもいとわぬ、「悪魔の選択」となる。ただし、なにもかも見通しての提起ならのらりくらりの前政権とは違い、「瓢箪から駒」の対話になる可能性大である。(彦)

日本語版TOPページ

 

会談の関連記事